歴史的な米朝首脳会談を前に、両国の高官が首脳会談の準備のため、ニューヨークやシンガポール、板門店で実務的な協議を続けているが、そのなかでも注目されているのが金正恩朝鮮労働党委員長の「執事」とも呼ばれるキム・チャンソン国務委員会部長(以下、キム氏)だ。その正体について、北朝鮮や中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏が解説する。
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キム氏は2月初め、金正恩氏の妹、金与正党中央委員会第1副部長が韓国・平昌冬季五輪に出席した時、随行秘書として韓国を訪れ、4月に板門店(パンムンジョム)で開かれた南北首脳会談の時も儀典と警備を担当する代表も務めたほどの金正恩氏の最側近だ。
正恩氏の信任が厚いキム氏とはどのような人物なのか。キム氏は1941年生まれ。故・金日成主席とともに抗日パルチザン活動を戦った革命烈士を父親にもつ。金日成大学を卒業後、モスクワの大学に留学。朝鮮人民軍で経験を積み、駐ソ連北朝鮮大使館付き武官を務めるなどエリート中のエリートで、国防委員会外事局長や党国際部長を歴任した。
キム氏は金正日氏とは幼馴染で、遊び相手として3歳違いの弟のような存在だったことから、1993年には党書記局入りして正日氏の秘書として仕えた。
金正恩指導部でも党書記室副部長や国防委員会書記室副部長を兼務。軍の階級も中将で、いわゆる「金正恩書記室長」と呼ばれる最側近としての要職を務めた。「金委員長の執事」と呼ばれる所以もここにある。