安倍晋三・首相の連続在職日数は「2000日」に迫ろうとしている。小泉純一郎を抜いて、ついに佐藤栄作、吉田茂という「大宰相」に次ぐ歴代3位の長期政権となった。
安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法改正、規制緩和、日米同盟の再構築など、「大勲位」中曽根康弘・元首相の背中を追いかけてきた。いま、安倍氏は仰ぎ見る存在だった中曽根氏をすでに在職期間で追い抜いたが、国民の目に映る安倍氏の姿は“大宰相”とはほど遠い。
2人の宰相は後継者選びで大きな差が出た。中曽根氏は自民党総裁任期を1年延長して5年間首相を務めた後、「ニューリーダー」と呼ばれた竹下登氏、宮沢喜一氏、そして安倍氏の父・晋太郎氏の3人の総裁候補の中から竹下氏を後継者に指名した。世に言う「中曽根裁定」である。
いずれも派閥領袖の実力者たちが、なぜ、後継指名に従ったのか。政治学者の後房雄・名古屋大学大学院法学研究科教授が指摘する。
「中曽根政権時代は田中角栄、福田赳夫、鈴木善幸という長老が政界で隠然たる力を持っていた。そこで中曽根氏はニューリーダー3人を重用し、重要閣僚や党3役を歴任させることで各派の世代交代を進め、長老の力を削いで総理の権力基盤を確立した。3人にすれば、自分たちに力を付けさせてくれたのは中曽根氏という恩義があるから、裁定には逆らいにくい」