定年後は毎日のように行っていた会社に行かなくなり、自然と家に居る時間は長くなる。そうすると現役時代より「家族」の問題は重要になってくる。
最近、運送会社を定年になったA氏(65)は、「在職中は忙しくて家を空けがちだったので、老後は妻と水いらずで過ごそう」と計画を練っていた。ところが退職した彼を待っていたのは、全く異なる現実だったのだ。
「良妻賢母タイプだった妻が突然、『あなたは自立すべきです』と言いだして、トイレ掃除から皿洗いまであらゆる家事をやらされるようになった。“これまでやらなかったからやってみなさいよ”ということから始まったのですが、慣れないので家事をしても妻は何かが気に入らないらしく、怒ってばかりなんです。おかげで家にいるのがすっかりイヤになっています」(A氏)
結婚以来、今までは日中不在だった夫が定年で自宅に「常駐」することで家庭内のバランスが崩れ、家の一切を担っていた妻が夫を「攻撃」するようなケースもある。当然、夫は夢見ていた幸せな老後を過ごすことが難しくなる。実際、夫婦関係は老後の幸せに大きく関連する。
マーケティングアナリスト・三浦展氏が主宰するカルチャースタディーズ研究所によるシニア調査が「幸せである人」と「幸せでない人」それぞれに「人生での失敗」を尋ねたところ、両者で最も差が開いたのは「夫婦関係があまりうまくいかなかった」との項目だった。すなわち、シニアの幸と不幸を分ける最大の要因は夫婦生活だったのだ。