おめでたいニュースに列島が沸いているが、水面下では異論が噴出していたようだ。「今後の競技生活への重圧」「賞の政治利用」「未受賞者の実績との比較」。それでも羽生が受賞に値した本当の理由とは──。
「いつもならユヅくんがリンクの真ん中で『ありがとうございました!』って丁寧にお辞儀をしてフィナーレを迎えるんだけど、その日は会場から一斉に『おめでと~!』って声が上がりました。ユヅくんは感極まった表情で会場を見渡しながら、自分を指さして“本当はぼくがありがとうを言う番なんだよ”っていうジェスチャーをして。祝福の歓声の中で手を振りながらリンク脇に下がると、見送った私たちも涙、涙でした」(観客の1人)
6月1日、羽生結弦(23才)に国民栄誉賞が授与されることが正式に発表された。史上最年少での受賞になる。その翌日、アイスショー「ファンタジー・オン・アイス」(いしかわ総合スポーツセンター、金沢市)に出演した羽生は、祝福のサプライズに感無量の様子だったという。
おめでたいニュースなのだが、首を捻ったファンも多かったようだ。そもそも、政府が国民栄誉賞の授与の方針を固めたのは、2大会連覇を果たした平昌五輪閉幕から間もない3月2日のこと。羽生の所属先の城田憲子監督(71才)はその時、「政府から認められ、感激はひとしお。フィギュアの金メダルの重さを認めてくれた」と喜んでいた。だから、「とっくに受賞したと思っていた」というファンがいたこともわかる。
「3月に発表されたのは、『首相が授与の検討を指示した』というだけでした。でも、歴代受賞者を見ると、『検討の指示』の後、1か月も経たずに正式決定しているので、長らく音沙汰なく表彰式まで4か月も“お預け”になった羽生選手のケースがかなり異例だったんです」(全国紙スポーツ部記者)
たとえば、2013年に受賞した長嶋茂雄氏と松井秀喜氏の場合は、「検討の指示」から「決定」まで約2週間だった。今年2月に受賞した将棋の羽生善治氏と囲碁の井山裕太氏のときは、年末年始休みを挟んだという事情もあって約3週間かかった。その一方で、羽生のケースでは正式決定まで約3か月かかっている。
そもそも国民栄誉賞とはどのように決まるものなのか。
内閣府によると、《広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えること》が賞の目的だという。