近年、幼児用座席付自転車(チャイルドシート付き自転車)で暴走するママさんライダーたちが目立つ。あるときは大量の荷物を背負いながら&だっこひもで子供をだっこしながらの2人乗り、あるときは赤ちゃんをだっこにおんぶの3人乗り――こうした状況についてはこんな声もある。
「この前、子供を乗せた自転車に衝突され、命の危険を感じました」。こう話すのは都内に住む会社員の高松愛さん(仮名)だ。
「自転車を運転していたのは、30代半ばのお母さん。ただでさえ、自転車に載せた荷物だけでも重そうなのに、その上、3才くらいの子供も前の幼児用座席に乗せて運転していたので、危なそうだな…と思って見ていたんです。すると、私とすれ違う瞬間にバランスを崩した。お母さんは必死に足で支えていたものの、荷物と子供の重さに耐えられず自転車は横転。車体は完全に私の体によりかかる状態になり、私も一緒に地面に倒れ込みました。
幸い、乗っていた子供はヘルメットをかぶってシートベルトも締めていたため無事でしたが、私が下敷きにならなかったら、大けがをしたかもしれません。思い出してもゾッとします」
5月9日、消費者庁は201~2016年までの6年間で、都内で発生した幼児用座席付自転車の事故で14才以下の子供1349人が救急搬送されたと発表した。搬送されたのは、1~2才児が多く、命の危険にかかわる事例もあった。
こうした事故は4月から7月にかけて増加する、と指摘するのは、自転車文化センター学芸員の谷田貝一男さんだ。
「この時期は、新たに幼児を幼稚園や保育園に送り迎えする母親がチャイルドシートに慣れておらず、車体の扱いを誤って事故が増えます。最近は、速度が一気に出る電動アシスト自転車の利用者が増えていることもあり、急発進による衝突や転倒も増えています」
緑園こどもクリニックの山中龍宏院長によると、自転車事故には「停止時」と「走行中」の2パターンがある。
「停止時に多いのは、子供を座席に乗せたまま母親がその場を離れ、子供が揺らしたり足場が不安定だったりして、自転車が倒れ、子供が投げ出される事故。走行中には、後部座席の子供の足や、車体に引っかけた傘が車輪に絡まって急停止・転倒し、子供や荷物の重さでバランスが崩れて横転することが多いんです」
今回公表されたのは幼児用座席付自転車の事故に限るが、実際には子供をおんぶ、だっこしながら自転車を運転し、生じる事故も多い。
実際、2016年5月には東京都国分寺市で、生後7か月の男児をおんぶしながら自転車を漕いでいた母親が乗用車と接触。男児は頭を強く打ち、死亡した。母親は渋滞中の車両の合間をすり抜けた後、横断歩道のない車道を渡ろうとして、対向車線の車と衝突したのだ。