定年後の引っ越し、住み替えには大きく分けて3つのパターンがある。「郊外の戸建て」から「都会のマンション」に引っ越すか、逆に「都会のマンション」を離れて「田舎暮らし」を始めるか、もう一つは「子供との同居」だ。同居まではいかなくても、子供と“スープの冷めない距離”に住むことを考えている人は少なくないだろう。
それぞれにメリットとデメリットがあることを理解しておく必要がある。ここで判断を誤ると、大切な資産を失い、老後の人生設計が根底から崩れてしまいかねない──。
Aさん(62歳)は定年を機に住み慣れた東京郊外の4LDKの一戸建てを売り、駅に近い2LDKのマンションに買い換えた。
「以前の家は駅やスーパーまで徒歩20分。若い頃は妻も自転車で買い物に通ったが、年を取ると危険もある。病院も遠い。そう考えて都心のマンションに住み替えました。夫婦2人なら2LDKで十分。子供部屋に残していた机やタンスなどは処分しました」(Aさん)
新居はスーパーや病院も近く、再雇用で働くAさんも通勤が便利になったという。車も手放した。
60代からの引っ越しのメリットは、Aさんのように「生活のダウンサイジング(縮小)」を図る、いいきっかけになることだ。
間取りを4LDKから2LDKへと2部屋少なくすると、まず光熱費が違う。電気代の契約アンペア数を下げることができるし、マンションは戸建てより冷暖房費もかからない。また、駅に近いと生活の“足”としての車も不要になる。ファイナンシャルプランナーの小谷晴美氏はこう話す。