〈2人で食事に誘われ、抱きつきやキスを求められる〉〈お酒の席でホステス的な扱いをうける〉──。
ズラリと並ぶ“セクハラ告発”の文言。これらはテレビ朝日の労働組合が5月17日に発行した「組合ニュース」に掲載されたもの。組合員にのみ配布されるA4用紙5枚の両面に印刷された資料の表紙には「ハラスメントに関するアンケート調査報告」とある。
財務省の福田淳一・前事務次官の「セクハラ辞任」は記憶に新しい。霞が関エリートの頂点に立つ人物が取材時に、「おっぱい触っていい?」「キスしていい?」などと繰り返し発言していたことの衝撃に加え、被害者である女性記者から相談を受けたテレ朝がその際に対応しなかったことも問題視された。
これを受けて、テレ朝の角南源五社長は4月24日に記者会見を開き、「社員からセクハラ情報があったにもかかわらず、社内で適切な対応ができなかったことは深く反省している」と述べ、今後の取り組みとして、「社内に相談窓口はあるが、問題点がなかったか速やかに検証する。社内で特別チームを組んで、この問題への対応や今後のコンプライアンス体制の見直しに取り組む」と表明した。アンケート調査の実施は、その会見直後だった。
「4月末、組合から『ハラスメントに関するアンケート』という表題で一斉メールが配信された。私たちは無記名でアンケートに回答しました」(30代の男性社員)
その結果、数多くの“告発”が調査報告に掲載されたのだが、そこではテレ朝にとって驚きの実態が浮き彫りになった。
「調査に至る経緯を考えれば、社外でセクハラに遭っている女性局員は他にもたくさんいるかもしれないので、その実情を把握することがアンケートの目的だったはず。しかし結果は、〈社外関係者からセクハラを受けた〉という女性よりも、〈社内関係者からセクハラを受けた〉と答えた女性の方が多かったのです」(同前)