変わらぬ坊主頭に口髭。頬はげっそりとこけ、ヒョロリとした身体にくたびれたジャージ、サンダル姿。“声をかけてはいけないタイプ”にしか見えない。それが久保竜彦(41)の印象だ。
「2003年、横浜F・マリノスで優勝し、ACLにも行って代表にも呼ばれ、調子が良いときに腰が痛みだした感じっすね」
──喋った。あの久保竜彦が喋った。内容云々よりも久保が自らの意思で喋ったことに驚愕した。
現役時代は伝説になるほど無口と無愛想で有名だった。気が合った人としか喋らず奥さんとも話さないとか、代表に招集されたときに唯一口にした言葉が「町内会の集会には出ない」だったとか。
「そんなこと言われてもね。言ったことはすぐ忘れるからわからない」
“日本代表史上最高のFW”と誉れ高かった久保が無表情で語る。高さ、強さ、そして繊細さを併せ持ったテクニックは日本人離れしており、どんな体勢からでも放たれる豪快なシュートは強烈なインパクトを与えた。
「W杯には行きたかった。2004年の欧州遠征でも10秒くらいしか本気を出してない。外国人が本気で来るのがW杯。だから行きたかった。現代表のことは、よくわからないけど」