音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、平成29年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した、オールラウンドプレイヤーの入船亭扇遊について解説する。
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前回に続き芸術選奨の話題を。昨年度の文部科学大臣賞を受賞したのは入船亭扇遊。現在64歳、今年の11月で芸歴46年となる。歯切れの良い口調と伸びやかな声が魅力の、上手くて陽気で爽やかな演者だ。
現在、東京の落語家で芸術選奨文部科学大臣賞の受賞者は扇遊以外に柳家小三治(2003年度)、立川志の輔(2007年度)、柳家権太楼(2011年度)、柳家さん喬(2012年度)、五街道雲助(2013年度)、春風亭小朝(2014年度)の6人。そのうち小朝以外の5人はその後、紫綬褒章を受章している。つまり、ある意味この賞は「紫綬褒章への第一歩」でもある。
文化庁が扇遊を「権太楼、さん喬、雲助」に続く存在と認定したのは大きい。正直「権太楼、さん喬、雲助」の位置に扇遊が肉薄しているイメージは希薄だろう(実際、芸歴も年齢も離れている)が、僕は2008年の拙著『この落語家を聴け!』で扇遊をさん喬、権太楼に次ぐ扱いにしていたほど好きな演者だけに、「やるな、文化庁!」というところだ。
ちなみに芸術選奨は原則70歳未満が対象。春風亭一朝が再来年12月に70歳になるので、その前にぜひ一朝に!と個人的には期待している。
受賞後初めて扇遊を観たのは4月22日「扇遊春の独演会」。なかの芸能小劇場でオフィス10が催している「春のらくご長屋」なる企画の一環で、この日は同会場で扇遊の前に古今亭文菊、桂文治、入船亭扇辰が独演会をやっており、扇遊の後にも立川こしらの独演会が控えていた。