大幅な値引き売却など不正取引の疑惑に始まり、文書廃棄、改ざん、逮捕者や自殺者まで出した森友問題に、ある区切りがついた。
大山鳴動、不起訴38人──5月31日、一連の問題を捜査していた大阪地検特捜部は、文書改ざんを指示したとされる佐川宣寿前国税庁長官らに不起訴処分を下した。2年にわたり世間を騒がせた事件の帰結に落胆する声が出るなか、司法の判断を“お墨付き”とばかりに、政府は問題の幕引きを図ろうとしている。検察にも詳しい、ジャーナリストの青木理さんが言う。
「佐川氏らの不起訴に納得できない人は多いでしょう。百歩譲って現行法で裁けないなら、国会は関連法を改正すべきです。また、安倍首相の責任が回避されたわけではなく、首相の職を辞すべきです。何よりも彼は権力に無自覚すぎる。権力の本質的な怖さをまったくわかっていない。
“私や妻が関係していたら議員も辞める”“学部新設について理事長と話したことはない”などという軽率なウソや発言が官僚らの忖度を生み、行政が歪み、公文書が改ざんされ、自殺者まで出したのです。それだけ最高権力者の力と責任は重い。その点にあまりに無自覚というだけで職を辞するに値します」
この指摘は、森友問題以降、社会を騒がせる数々の問題に通底する。
チームにとって絶対的存在だった日本大学アメフト部・内田正人前監督の指示、財務省幹部だった佐川氏の改ざん指示など、自身が発する言葉がどんな結果を生むか――そうした想像力の欠如が、忖度、ウソ、ごまかしを派生させている。
一方で、森友問題や加計問題などが長引けば長引くほど、「民主主義の根幹が問われる」「戦前への回帰」「言論の自由が失われている」と、そのスケールは大きくなるばかり。真実が知りたい、これ以上ウソをつかないでほしい、言い訳はやめてほしい、そんな私たちの思いと乖離するように、政争や論争の具になっていくことで、私たちの怒りのエネルギーは行き場を失い、言いようのない閉塞感が充満しているのではないか。
「それこそが政権の狙いです。野党やマスコミが追及を続けることに対し、与党内からはもちろん世論からも“いつまでこの問題を取り上げるのか”“もっと大事なことがあるだろう”という声が上がっています。そうした空気が拡散し、いつのまにか幕引きになる。それでは彼らの思うつぼです」(青木さん)
情勢が日々変化する北朝鮮の問題や、トランプ大統領が引き金をひいた貿易問題など、たしかに時間を注力すべき“大事な”問題は山ほどある。ただ、一連の「ウソ」と「ごまかし」にまつわる問題は私たちが生きていく上で、大切にすべき本質にかかわることではないだろうか。
「私たち、昨日会ったよね?」「いや、会ってないよ」「こう言ってたよね?」「そんなこと言ってない」──そんなに言うなら証拠や記録はあるの? このやり取りがいかにおかしいか。人と人との信頼関係を根底から破壊してしまうだろう。それが現実に起きてしまっている時代に、私たちはどう生きるべきか、そのことについて考えるべきなのかもしれない。
※女性セブン2018年6月28日号