親が老人ホームに入居するとき、不安なのはもしも何らかの事故が起きたら、ということだろう。施設内で起きる出来事は、外から窺い知ることが難しいからだ。どの施設でどんな事故が起きているのか。その情報は老人ホーム選びにおいて、重要な判断材料となるはずだ。
そこで本誌・週刊ポスト取材班は、ジャーナリストの末並俊司氏とともに、国に代わって「介護付き有料老人ホーム」の事故件数に関する聞き取り調査を行なった。
介護付き有料老人ホームは設置の際に所定の都道府県、その県の老人ホーム数が多い場合は、政令市または中核市のいずれかに届け出る。届け出を受理し、指導監督を施設に行なう全国112自治体が今回の調査対象だ。該当する老人ホームの施設数は3775施設(届け出が完了している2016年度時点)、定員数は45万7918人に上る。
今回のアンケート調査では、事故件数だけでなく、どのような事故に当たるかの分類も調査した。その結果、老人ホームで最も起こりやすい事故は「骨折」だと判明した。実に5814件。
その多くは、居室内で起こっている。若いときは外で「骨折」するようなイメージがあるが老人ホーム内では異なる。
「ベッドからの転落などが主な原因だと思われます。高齢になると骨粗鬆症が進み、骨折しやすくなる。車椅子からベッドへ移乗するだけで骨折させてしまうこともあるくらいです」(介護評論家の佐藤恒伯氏)