国内

新幹線殺傷事件、乗客を命懸けで守ったmen for othersの精神

事件直後、「のぞみ」は通常は通過する小田原駅に緊急停車

 新横浜─小田原間を走行中の東海道新幹線「のぞみ265号」で発生した殺傷事件。小島一朗容疑者(22才)は、「なた」を振るって乗客に襲いかかり、男性1人が死亡、女性2人が怪我をおった。亡くなった男性の名前は、梅田耕太郎さん(享年38)。横浜での出張を終えて、「のぞみ265号」に乗り、妻の待つ兵庫県尼崎市のマンションへと帰る途中の惨劇だった。

 梅田さんは乗客に襲いかかる容疑者を後ろから羽交い締めにして押さえ込み、その間に多くの乗客が逃げたという。しかし、最終的に梅田さんは、凶刃に倒れてしまった──。

 三浦綾子の『塩狩峠』(1966年)は実際に起きた鉄道事故に基づいて書かれた小説だ。塩狩峠(北海道上川郡)を越えたところで汽車が暴走。満員の乗客の命を救うため、鉄道職員の主人公・永野信夫が自らの体を線路に投じて、列車の下敷きになることで車輪を止める。永野も、作者の三浦自身も熱心なクリスチャン。「自己犠牲の愛」を描いた不朽の名作として知られる。

 今回の事件で命を落とした梅田さんも、神奈川・鎌倉にあるキリスト教系の名門中高一貫校「栄光学園」で学んだという。同級生が語る。

「中1からバレーボール部に所属して、ずっとレギュラー。高校に入ると身長が185cmほどになり、ポジションはセンターでした。レシーブは苦手だったけど、試合では彼のブロックに何度チームが救われたことか。下級生の面倒見係で、チームのムードメーカー。最終学年では副キャプテンをやってました。ボール拾いも審判も、人が嫌がることを進んでやる頼もしいチームメート。梅田みたいにいい奴がなんで…。本当に悔しいです」

 文武両道を絵に描いたような青年時代だった。

「文化系の囲碁将棋同好会もかけ持ちしてました。梅田くんの熱心な活動もあって、彼の代から同好会は、囲碁将棋部に格上げされたんです。

 音楽も好きで、仲間5人でロックバンドも組んでました。彼はベース担当。文化祭でやったり、高2のときは横浜・鶴見のライブハウスでもライブをやって。当時流行っていたZIGGYや氷室京介をコピーしてました。自分がでしゃばって目立とうというタイプじゃなくて、芯がしっかりしていて、どっしりと男気がある人でした。

 ニュースで名前を聞いたとき、別人であってほしいと思ったけど、そんなことをとっさにできるのは、梅田くんしかいないから…。たしか彼の実家はクリスチャンだったはずです。学校で合言葉のように使っていた『men for others(他者のために)』というキリスト教の教えが根付いていたんでしょう」(学校関係者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン