八千草薫、三田佳子、由紀さおり、美空ひばり、八代亜紀、栗原小巻、原節子……数々の名女優を撮影した昭和を代表する写真家の1人、大竹省二。大竹が写真家の道を歩み始めたきっかけは、1933年、13歳で父親にカメラを買い与えられたことだった。
戦中、戦後に空腹を堪えて貴重なフィルムを闇市で買い、焼け跡となった街並みを撮影、その縁でGHQの嘱託カメラマンとなる。1948年にフリーに転身後、世界の音楽家や日本を代表する作家・俳優らのポートレート、世界各地の街角のスナップ写真などの作品を発表し続けた。
大竹の重要な撮影テーマの一つは「女」。自然な美しさを表現する大竹の写真は女優たちに強く支持され、数多くの作品が残った。旺盛な撮影意欲は素人にも向き、テレビ番組の企画で、一般公募に応じた主婦やOLのヌードを大竹が撮影するコーナーの応募者は数千人にも上ったという。生前こんな言葉を残している。
「昔撮った写真を見ると、その時代が甦る。人生を止めることはできないけれど、写真だけは人生を止めて眺めることができるのだ」
2015年7月、95歳で逝去。レンズを通して見続けた女性の数は2万人以上に上るという。
※週刊ポスト2018年6月22日号