天才とは神が作りだした最高傑作であるという。ならば、この男、サッカー元日本代表・礒貝洋光(49)は一体何なのだろうか。
「寒い1~3月は何もしない。その間は髭も伸ばしっぱなしで冬眠する。クマと一緒だね。髭は人に会わない意思表示だから。住まいなんてどこかの間借りで十分でしょ。仕事のスクールとかで東京と大阪を行ったり来たりするときは、車上生活だよ」
世間の価値観からすれば、明後日の方向を向いているが、なぜか陽のオーラしか感じない。Jリーグ黎明期に“天才”と呼ばれた選手だが、今は住み処も本業も持たない旅人、いや仙人? とにかく自由人だ。
「大学3年生だった1991年に初めて代表に呼ばれたけど、『なんだ、こんなもんか』と思った。代表ってサッカーだけを追求する場所だと思っていたのに、皆パチンコとか行ったりしてのんびりしてたね。今の代表は皆ストイックで若手もレベルアップを求めているからね。そうそう、1991年のキリンカップで優勝したんだけど、俺、学生だったから優勝賞金を貰えなかったんだよ。今からでも貰えるかな」
その身なりで言われると冗談に聞こえないが、表情は陽気そのもの。29歳で引退後、プロゴルファーとして活動した時期もあった。
「ゴルフのほうがよっぽど楽しい。自分だけでやれるじゃん。いちいち人のプレーを見てるのって楽しくなくない?」
今は声がかかればサッカースクールで教えたり、知り合いの建築現場を手伝ったりする。ただし、気が向けば、だ。