日本人の抜歯原因1位が「歯周病」だ。にもかかわらず、患者を惑わせる様々な“嘘”や“誤解”が蔓延し、検査や治療が必ずしも適切に行なわれていない実態がある──発売即重版の話題書『やってはいけない歯科治療』著者のジャーナリスト・岩澤倫彦氏が“歯周病治療の罠”を告発する。
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取材で驚いたのが、“抜歯の判断は、歯科医によって異なる”という点だ。歯周病治療のリーダーとして歯科医たちを指導する弘岡秀明氏(スウェーデンデンタルセンター・院長)はこう話す。
「一般的に歯根を支える組織(歯槽骨)が、3分の1になると、抜歯と判断する歯科医が多い。歯を残すスキルがない歯科医は、抜歯する方が簡単なのです。しかし、歯根が3ミリ程度しか歯槽骨に入っていない状態でも、歯を残せる場合もあります。歯科医のスキルと、患者の毎日の努力が必要ですが」
つまり、同じ重度の歯周病でも、担当する歯科医によって、歯の運命は変わってしまうのだ。
ある60代男性は、5年間も歯周病治療に通いながら、大きく歯が動揺するようになり、次々と抜歯されて、上顎が入れ歯になってしまったという。このように歯周病治療をせず、安易に抜歯されてしまうケースは珍しくない。
「歯周病菌は、酸素があると生存できない嫌気性で、歯周ポケットの中に入り込み、バイオフィルム(様々な種類の細菌が集まった、粘着性の菌膜)として定着します。だから定期的に、専門クリニックで歯周ポケットの管理をすることが重要です」(弘岡氏)