子供にとって、日常的に接する動画はテレビよりもスマホで見るネット動画だ。アイドルやタレントに憧れるように、人気YouTuberになりたいと願う子供は少なくない。その思いの強さが暴走した結果、今年3月には、YouTubeの再生回数を増やしたい高校生が、渋谷駅前で不特定多数の人に体を触らせる様子の動画を撮影してネット炎上、東京都迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで書類送検された。子供が人気YouTuberになりたがったら、どう対応すればよいのか。ITジャーナリストの高橋暁子氏が解説する。
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小学生の保護者からよく、「子供がYouTubeにハマりすぎてやめられない」という悩みを聞く。「朝から晩まで何時間でもYouTubeを見ている。でも、食事を作る時や外出先などで静かにしてほしいときは便利だから、つい使わせてしまう」。中には、「外出先では動画を見るためにWi-Fiがあるところに行きたがる」という家庭もあった。
あまりに小学生の兄姉が動画を見るため、未就学児の弟妹にも影響が出ているようだ。YouTuberの口真似をして「さて、次は◯◯を見てみましょう」と言うようになったとか、平仮名もわからないのに音声検索で「アンパンマン」などと動画を検索するようになったという話はとても多い。
「子供たちは見たいときに見たい動画が見られるのが当たり前になっており、テレビは不自由に感じるようだ」という。中でも人気が高いのはYouTuber動画だ。HIKAKINやキッズYouTuberなどの人気が高いそうだ。子供たちにとってYouTuberは一番身近な有名人であり、憧れの存在となっている子供は少なくない。
◆憧れの職業は「YouTuber」
ソニー生命保険の「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」によると、「将来なりたい職業」を聞いたところ、中学生男子の第3位、中学生女子の第10位に「YouTuberなどの動画投稿者」が入ったことが話題となった。これは特別な話ではなく、筆者の子供が通う小学校の6年生150名のうち2名が「YouTuberになりたい」と回答するなど、ごく一般的な小学生がYouTuberに憧れているのが実情だ。
アーケードゲームと連動したテレビ東京で放送中の小学校低学年女児向けアニメ、『キラッとプリ☆チャン』をご存知だろうか。主人公たちは、YouTubeのような動画サイト「プリチャン」で動画をアップしてアイドルを目指す。もらった「いいね」の数に応じてアイドルとして成長していくというストーリーであり、ライブ配信もできるなど、今の時代を反映させたものとなっている。”動画サイト”や”自分発信”は、小学校低学年女児にまで深く浸透しているのだ。
ある小学校に通う子供たちの間で、同級生がYouTuberになったという話題が広がった。子供から話をきいた保護者が探してみたところ、その子供は自分で自分の動画を撮影、投稿していたことがみととれた。そしてコメント欄では、視聴者に小学校名を聞かれて素直に答えたやりとりがそのまま残っていた。誰かわからない人からの質問に誰からも見える場所で答えるなんて、親は把握していないのではないか。確かめると、YouTubeのアカウントはその子の親のものだったが、登録はしたもののほとんど使っておらず、危惧した通り、子供がひとりで撮影・投稿したものだとわかった。
親の知らぬ間に小学生がYouTuberとなっていたこの出来事は、クラスや学年を超えて話題になるほどの大問題となってしまった。インターネット上でいったん名前、学校名、顔が拡散されると、元の状態に戻すことはできない。広まる範囲が大きくなるほど、なかには悪意をもって接近してくる人も出現する。小学生では、悪意ある人に自力で対応することは難しい。
多くの親が子供に動画投稿の危険性や、ひとりで撮影・投稿しないように教え諭しているとは思うが、このように、子供が勝手にYouTubeに動画を投稿してしまった例は少なくない。実際、子供YouTuberが視聴者からの煽りに反応して炎上した例はいくつもある。