カジノ法案(カジノを含む統合型リゾートIR実施法案)の成立を目指す国会審議が大詰めを迎えているが、反対派の多くが懸念するのは、ギャンブル依存症による多重債務者の増加などだ。そもそもギャンブルの「負け」はギャンブルでは取り戻せないと話す人は多いが、本当なのだろうか。ニッセイ基礎研究所・主任研究員の篠原拓也氏が、確率統計学をもとに解説する。
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確率や統計の話題には、ギャンブルと関係するものが多い。その中でも、コイン投げゲームにまつわるものは数多くある。コイン投げゲームの有名な法則を1つ紹介しよう。
まず、偏りのないコインを1枚用意する。コインを投げて表が出たら勝ち、裏が出たら負けとする。勝ちの場合は100円を受け取り、負けの場合は100円を支払う。このコイン投げを何度も繰り返す。コインを投げるごとに、100円を受け取ったり支払ったりするので累計収支が変動する。
コインに偏りがないとしているため、表と裏の出る確率はいずれも2分の1とみてよい。まず、最終的な累計収支がどのように分布するかを考えてみよう。
最終的な累計収支がトントンになるケースは、たくさんある。当初勝ち続けて黒字が膨らんだが、その後負け続けて結局0になるケース。逆に、当初負け続けて大赤字になったが、その後勝ち続けて結局0になるケース。勝ったり負けたりを続けて、結局0になるケースなどだ。
勝ち続けたり負け続けたりして、最終的に大きな黒字や赤字になるケースは少ない。最終的な累計収支の分布は、収支0を頂点とした山の形になる(図1)。これを、コインを10回投げる場合でみてみよう。
収支の変動パターンは全部で1024 (=2の10乗)通り。そのうち、最終的な収支が0のケースは252通り。約4回に1回は、収支トントンで終わることになる。一方、10連勝や10連敗で累計収支が1000円の黒字や赤字になるケースは1通りずつしかない。