二宮和也演じる天才外科医・渡海征司郎が、さまざまな闇が渦巻く大学病院に立ち向かう姿を描く連続ドラマ『ブラックペアン』(TBS系)。最新の8話では、これまでの視聴率と比べて急浮上した。ここへきて視聴者の興味をグッと惹きつけたのはなぜなのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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10日に放送された第8話の視聴率が16.6%と自己新を記録した『ブラックペアン』。前回から3.6%もの大幅アップに加え、今期連ドラのトップであることから、残り2話に期待がかかっています。
同時に浮上しているのは、「それまで12~13%を推移していた視聴率が、なぜ大幅アップしたのか?」という疑問。
その理由は、ここまで毎回繰り返してきた“確信犯的なワンパターン”にあります。
◆「手術ミス」のフラグ待ちで盛り上がる
8話までの主な筋書きは、【1】医師たちが最新医療機器を使った手術で失敗 【2】患者が大量出血して命を落としそうになる 【3】天才外科医・渡海征司郎(二宮和也)が登場。「邪魔」と医師や機械を押しのけて手術する。このワンパターンを毎週、確信犯的に繰り返してきました。
ワンパターンは、「また同じ展開か……」とガッカリされるか、「待ってました!」と歓迎されるか紙一重。「他の医師と最新機器が失敗し、渡海だけが成功する」という極端なコンセプトは、スタート当初から賛否両論でした。
しかし、徐々に「待ってました!」の人が増えているのです。ワンパターンだからこそ、視聴者はお決まりのシーンを待つようになり、ネットにも「手術ミスのカウントダウン突入」「血プシュー」「渡海登場!」「邪魔キター」などのコメントが続出。多くの人々が、いわゆる“フラグ待ち”の状態を楽しみ、同時に盛り上がっているようです。
この確信犯的なワンパターンを売りにしているのは、一話完結型の時代劇。たとえば、『水戸黄門』が印籠、『遠山の金さん』が桜吹雪を見せる展開に似ています。また、同じ医療ドラマの大ヒット作『ドクターX~外科医・大門未知子』(テレビ朝日系)も、確信犯的なワンパターンが売りの作品と言えるでしょう。
大門未知子(米倉涼子)の「失敗しない」と、渡海の「手術成功率100%」は同じ意味であり、低い地位や奔放な発言なども似ています。手術が成功することを分かっている視聴者は、医療ドラマの王道である「命を救う感動」より、「ワンパターンなシーンで盛り上がる」ことを優先。けれんみたっぷりの世界観を安心して楽しむことができるのです。
◆『ドクターX』に似た悪役のやられっぷり