アメフト部の悪質タックル問題をきっかけに、日本大学全体のガバナンスに注目が集まっている。理事長はなぜ「独裁体制」を構築することができたのか、問題にピリオドを打つことはできるのか、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。
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日本大学アメリカンフットボール部の「悪質タックル事件」で、関東学生アメリカンフットボール連盟は日大の内田正人前監督と井上奨前コーチを事実上の永久追放に相当する「除名」処分にした。
だが、これで幕引きというわけにはいかないだろう。日大アメフト部は内田前監督が強権支配していたとされるが、それを生んだ背景には日大のガバナンス(統治)問題がある。内田前監督は人事担当の常務理事(5月30日付で辞任)に加え、大学職員としても人事部長と運動部を統括する保健体育審議会の事務局長を務める実質的なナンバー2だったから、誰も逆らえなかったのである。その後ろ盾が“日大のドン”と呼ばれる田中英壽理事長だ。
報道や日大のホームページによると、田中氏は日大相撲部出身で、1967年に学生横綱となり、1969年に卒業して日大に就職。アマチュア横綱にも3回なって1999年に理事、2002年に常務理事、2008年に理事長に就任した。そして田中氏は総長を廃して理事長に権限を移す組織改革を行ない、自身が運営権を握った。総長だった大塚吉兵衛氏は学長に“格下げ”されて教育面だけを担当することになった。いわば大塚学長は田中理事長の傀儡であり、この「田中独裁体制」にメスを入れて膿を出し切らない限り、今回の事件の根本的な問題は解決しないと思う。
学長の上に理事長がいるという構造は日大特有の仕掛けだが、実はそれだけで田中理事長に権力が集中しているわけではない。その背景には、文部科学省が推し進めた大学のガバナンス改革がある。