火を使わず、電子デバイスで専用たばこを加熱してその蒸気を吸引する「加熱式たばこ」。ここ数年、オフィスや街中の喫煙所で愛用する人が増え続けているが、どのくらい普及が進んでいるのだろうか。
従来の紙巻きたばこ市場は、折からの受動喫煙対策や嫌煙ムードの高まりによって右肩下がりとなっている。2017年度の販売本数は前年比13%減の1455億本で、市場規模は3兆1000億円となっている(日本たばこ協会調べ)。
一方、煙が少なく紙巻きたばこに比べて受動喫煙による有害性が低いとのデータも示されている加熱式たばこは、「周囲に迷惑をかけずに吸える」と、紙巻きから乗り換える喫煙者が急増。いまや市場規模は8000億円を超え、国内で消費されたすべてのたばこのうち、約2割が加熱式と推計されている。
今後も加熱式市場はますます拡大し、2025年には喫煙者の半数が加熱式ユーザーになるという予測まである。
そんな中、たばこメーカーによる加熱式のシェア争いは一層激化しそうな気配だ。
現在、米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の「iQOS(アイコス)」、日本たばこ産業(JT)の「Ploom TECH(プルーム・テック)」、そして英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の「glo(グロー)」が三つ巴の販売競争を繰り広げている。
3社のうち、圧倒的なシェアを誇るのがアイコスだ。2016年に早々と全国販売を開始した先行者利益も得て、国内の加熱式市場のおよそ7割がアイコスユーザーと見られている。今年3月末には利用者が500万人を突破したと大々的に発表され、6月からは本体価格を3000円下げて7980円にするなど、さらなる新規ユーザーの獲得を狙っている。
昨年10月より東京、大阪、宮城の地域限定販売から全国に販路を拡大させたグローも、品薄だった生産体制をようやく整え、今年5月より本体の実質値下げに踏み切った(ユーザー登録で2980円)。
そして、加熱式市場でもっとも出遅れていたプルーム・テックは6月より本体価格を以前より1000円安い3000円に値下げして全国展開を開始。7月からは主要コンビニエンスストアへの販路も広げる見込みだ。
JTは「加熱式シェアの40%を目標に反転攻勢をかける」と鼻息も荒い。これまで低温加熱でアイコスやグローに比べて「吸いごたえがない」との声もあったプルームユーザーの不満に応え、年内には高温加熱タイプの新製品を出す計画がある。
そんなヒートアップする加熱式市場に相乗りしようと、サードパーティーの動きも慌ただしくなってきた。