ライフ

住宅街に灯る店灯りは父の遺志 家族で守る東京・田無の角打ち

「若い人が来るようになってうれしいです」と女将の理恵子さん

 西武新宿線田無駅。沈みかける夕陽の中、赤や緑の夏を実らせる野菜畑や、夏花の咲きこぼれる住宅地をぶらりぶらりと約15分。小金井公園へ続く府中道(ふちゅうみち)のつま先下がりの坂にたどりつくと、『ふじや酒店』の心安らぐ灯りが現れる。
 
 のども適度に乾き始めた、絶好のタイミングだ。
 
「駅からこれだけの距離にあるというのが、この店を愛する者に好材料なんです。駅近だと混みがちで入れないなんてことがあるけれど、そんな心配はまずなくて、ゆっくり飲めますから。でもここんとこ、角打ちのいい店ってことが口コミで広がり、新しい顔がふらりと入ってくるようになりましたね。それはそれでうれしいんですけど」(50代、公務員)
 
 店は昭和40年からこのなだらかな坂道の脇にある。
 
「当時はこのあたり、にぎやかな商店街だったのよ。でも、昭和が終わる頃になると、どんどん寂しくなってね。主人(恭章<やすあき>さん・享年53)が亡くなる前、坂道の上から見下ろしたとき真っ暗なのは寂しいよな。だから、ふじやの灯りは消すなよって。でも、辛い商売だから、ふたりいる娘に継がせるのは可哀想だなあと、悩んでいたんです」(先代女将・伊藤秀子さん・81歳)
 
 ところが、長女の大江理恵子さんは、いつからか父の遺志を継ぐことに決めていた。保育園の栄養士としての勤めを辞め、同い年のご主人・裕一さん(53歳)と共に、ふじやの灯りを灯し続けたのだ。
 
 それから30年。

「“ちょい飲み”という言葉を使って角打ちを始めたのは去年の5月からなんです。なにか新しい方向性をと考えていたところ、『店で飲めるようになれば楽しくなると思うよ』とか、『店で飲みたいな』みたいな話をするご近所の人が何人かいて。角打ちの店に飲みに行ったり、お邪魔して勉強させてもらったりして、思い切って始めることにしたんですよ」(理恵子さん)

関連記事

トピックス

広末涼子容疑者(写真は2023年12月)と事故現場
《広末涼子が逮捕》「グシャグシャの黒いジープが…」トラック追突事故の目撃者が証言した「緊迫の事故現場」、事故直後の不審な動き“立ったり座ったりはみ出しそうになったり”
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
【広末涼子容疑者が追突事故】「フワーッと交差点に入る」関係者が語った“危なっかしい運転”《15年前にも「追突」の事故歴》
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
「全車線に破片が…」広末涼子逮捕の裏で起きていた新東名の異様な光景「3kmが40分の大渋滞」【パニック状態で傷害の現行犯】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
広末涼子(時事通信フォト)
【広末涼子容疑者が逮捕、活動自粛発表】「とってもとっても大スキよ…」台湾フェスで歌声披露して喝采浴びたばかりなのに… 看護師女性に蹴り、傷害容疑
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン