中国の首都・北京市内の町内会に相当する街道居民管理委員会で、70歳以上の市民を対象に、地域の治安を維持する“通報員”の募集が始まったことが明らかになった。通報員の仕事は、地域に長年住み、近隣の家族構成や家庭の事情に詳しい熟年者を使って、地域の治安を乱しそうな怪しい人々を密告することだ。こうした仕事で一般市民を対象に公募するのは極めて珍しい。
習近平指導部が発足してすでに2期目で、5年以上経っていることから、いよいよ長期政権を目指して、社会的にも引き締め態勢を強化する表れとみられる。米国政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RAF)」が報じた。
この通報員の募集要項には、その条件として、年齢が70歳以上であることのほか、「身体健康、地域の建設を熱愛し、中国共産党の指導を断固として守り、政治にも敏感で責任感が強く、順法精神に富み、公益を尊重し、地域内の人間関係や人員構成を熟知し、地域の治安維持や社会安定に貢献することを熱望する者。地域に長く居住している市民で、問題があるとみられる人を街道居民委員会に通報することができる者」と記載されている。まさに、共産党員の見本のような人物といえる。
しかし、ネット上では、この募集を知った市民から「やばい、わが国は包丁を買うのにも名前を登録し、列車に乗る際も身分証を提示しなければならないほど厳戒態勢を敷いているのに……。そして、まだまだ元気な老人を用いて、不審な人物を摘発しなければならないのでは、社会的に不安定だと習近平指導部がみなしているということの裏返しだ」との意見が書き込まれている。
RAFによると、北京市には市民による多種多様な「密告要員」が存在する。同委員会もそのひとつで、同委に所属する役員が定期的に隣近所を見回りして、異常はないかを確かめる。見知らぬ人間がいた場合は、速やかに警察に通告するのが役目だ。