一連の霞が関をめぐるスキャンダルは、長くこの国を動かしてきた「官僚政治」の終焉を印象づけた。安倍官邸の一強支配により、権力も権威も失った中央官庁は今、どのように変質しようとしているのか。加計問題を追及した『悪だくみ』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した森功氏が、霞が関で始まった新たな権力闘争の内幕をレポートする。(文中敬称略)
* * *
〈財務事務次官に星野主税局長 福田氏の後任、財務省調整〉
朝日新聞をはじめ、全国紙が軒並み財務省の事務次官人事を報じたのが、6月3日の朝刊だった。言うまでもなく例のテレ朝の女性記者に対するセクハラ問題による福田淳一の事務次官辞任を受けた後任人事である。
財務省では、一足先に森友学園の土地取引を巡る公文書改ざんで前国税庁長官の佐川宣寿が辞任している。事務方ナンバー1とナンバー2がそろって空席、という異常事態が続いてきた。それだけに、新聞各紙はむろん、マスメディアが人事の行方に神経を尖らせてきたといえる。
安倍政権に厳しい朝日や毎日だけでなく、政権寄りと見られる読売などが、次期事務次官として現主税局長の星野次彦(58)の名を挙げた。だが、なぜかこの日、日本経済新聞だけが財務省人事に触れない、いわゆる特オチ状態になる。