全国の賃貸アパートやマンションで入居を拒まれる単身の高齢者が多数報告され、深刻な問題となっている。賃貸オーナーは突然の事故や病気、孤独死などを恐れ、たとえ収入や貯蓄があっても高齢者には部屋を貸しにくいというのが大きな理由だ。その一方で、将来の“住不安”を逆手に取った狭小の新築分譲マンションも増えているという。では、高齢者になっても持ち家が必要なのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がアドバイスする。
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現在、東京の都心エリアで供給されている新築マンションは、大半がコンパクトマンションと呼ばれる狭小タイプである。面積でいえば60平方メートル未満。ちょっと前までは40平方メートル台・50平方メートル台が中心だったが、最近は30平方メートル台や20平方メートル台まで見られるようになった。
20平方メートル台というのは、いわゆるワンルームマンションと呼ばれるカテゴリーに入り、通常の分譲マンションとは一線を画する特殊な住宅だった。つまりは個人投資家向けの金融商品の延長線上にあるのがワンルームマンションだ。
そういった特殊なマンションを、最近では大手のマンションデベロッパーが商品化するようになった。それも、賃貸需要が強い都心エリアだけでなく近郊エリアまで供給され始めた。その背景にはいったい何があるというのだろう。
従来、コンパクトマンションというのはシングルの若年層向けだった。結婚して家庭を築く、ということにある程度距離を置いた単身の男女が「いつまでも家賃を払うよりも……」という理由で購入する需要を狙っていた。
しかし、最近では少し違う。結婚をしない、ということも含めて何らかの理由で老後を単身で暮らさなければいけないシングル向けに20平方メートル台や30平方メートル台の新築マンションを供給しているようにも思える。
マンション市場を長年観察してきた私から見ると、「20平方メートル台や30平方メートル台の新築マンション」という商品形態には健全性がない。
その理由は、10年後に中古マンションとして売却する場合に、資産価値があまり評価されないからだ。「20平方メートル台や30平方メートル台で築10年超の中古マンション」というのは、「自分が住むため」というよりも「賃貸運用のため」の需要しか想起できないからだ。であれば、都心の人気のある駅の徒歩5分以内の物件しかまともな資産価値評価を受けられない。
しかし今はちょっとした郊外の駅徒歩6分以上の場所にも「20平方メートル台や30平方メートル台の新築マンション」が、無視できないボリュームで供給されている。そして、それを購入していると思われるのは若年シングルだけではない、やや高齢の単身者も含まれるのだ。その背景には、「賃貸だと不安」という心理的な強迫観念があると推測できる。