森友学園問題やセクハラ問題など、財務省を中心とした一連の霞が関をめぐるスキャンダルは、長くこの国を動かしてきた「官僚政治」の終焉を印象づけた。安倍官邸の一強支配により、権力も権威も失った中央官庁は今、どのように変質しようとしているのか。加計問題を追及した『悪だくみ』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した森功氏が、霞が関で始まった新たな権力闘争の内幕をレポートする。(文中敬称略)
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かつて「大蔵一家」と呼ばれ、国家の舵取りをしてきた自負のある財務省には、OBを含めた結束力がいまだ残っているという。半面、内心では、安倍政権を守るため、無理筋を重ねてきた者に対する不満も燻る。
森友学園の土地取引は言うまでもないが、ここまで次官人事が迷走を極めた元凶のセクハラ問題対応についても、省内には相当なフラストレーションがたまり、疑心暗鬼が渦巻いている。
女性記者に対するセクハラを週刊新潮が報じたのは4月12日。当初、事務次官の福田淳一本人が「セクハラの事実はない」と言い張り、財務大臣の麻生太郎も「更迭しない」と突っぱねた。が、当人が女性記者をバーで口説いていた生々しい音声データが公表されるや、財務省は防戦一方になる。
その対応でとりわけ酷かったのが、顧問弁護士に被害女性の聞き取り調査を依頼した一件だ。あろうことか、財務省では、セクハラ被害者に名乗り出るよう要請した。
「名乗り出なかったら、被害女性はセクハラ認定されないんですか」