6月15日に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)が話題になっているが、届け出は低調だという。従前、民泊仲介サイトへは6万件以上掲載されていたが、実際の届け出は3000件程度。大手仲介サイトのAirbnb(エアビーアンドビー)が法令施行に先立ち、届け出のない民泊の大量掲載削除をしたことも大きなニュースとなった。
届け出が低調なのは、法令のハードルが高いことなど様々な理由が指摘されているが、許可を得ない民泊の動向はやはり気になるところだ。
ホテルや旅館などの宿泊施設にとって、OTA(Online Travel Agent)といわれる宿泊予約サイトの存在感は絶大で、いまや宿泊施設の誘客になくてはならない存在となった。当然、民泊にとっての仲介サイトも同様だ。
仲介サイトに掲載できるか否かは民泊ホストにとってはまさに死活問題。一方、これまで違法状態とはいえ、民泊があったからこそ仲介サイトも業績を伸ばしてきたという事実があるがゆえに、民泊と仲介会社は共存共栄という意識がホスト側にはあった。そのため、今回の一斉削除はまさに梯子を外されたという思いが従前の民泊ホストの間では根強い。
いずれにしても懸念されるのが違法民泊のその後だ。民泊新法が施行されたからこそ、違法民泊排除の動きの実効性がなければ、法そのものの存在意義が問われかねない。
早速、違法民泊が摘発されたという情報もあるが、このような警察の動きは新法施行のタイミングと相まって、法の実効性からも注目されるものといえる。引き続き行政の立ち入り検査や警察による摘発などは続くだろう。
一連の民泊新法施行という流れの中で、新法での届け出を視野にそのタイミングを模索し準備しているホストがいる一方で、廃業するケースも多い。オークションサイトでは“Airbnb家具”などと称し、家財道具一式が出品される例も増えているという。これもまた民泊廃業の余波であろうか。
他方、届け出をせず営業を続けようとする民泊ホストへの取材では、やはり集客方法について話題となる。国内の仲介サイトがNGならば海外サイトからの集客をというケース、従前のリピーターが多い施設ならばSNSの活用など生き残りの模索に必死だ。
民泊新法において筆者は“顔の見える”民泊の重要性に注目する。施行に先立った6月13日にオレオレ詐欺のアジトとして民泊施設が使用されていたとしてニュースになった。違法民泊ではない特区民泊で認可された施設が舞台であったが、容疑者によると合法・違法にかかわらず、滞在費の安さや匿名性など民泊施設を利用するメリットがあったという。
新法では、宿泊者の本人確認と宿泊者名簿の備え付けを義務とする。本人確認は、対面またはタブレットなどのITを使った方法のいずれかが選べるが、中でもITを活用した受付方法が注目されている。
コンビニエンスストア大手が、店頭の専用端末機器でチェックインや鍵の受け渡しをゲスト自らが行うサービスを発表し話題となったが、ビジネスチャンスと捉えシステム開発へ参入する業者も増えているという。コンビニエンスストアであれば機能性の高い防犯カメラも設置されているだろうから、防犯面からの親和性は高いといえるだろう。
一方、直接対面して本人確認をする方法は、特に外国人利用者によるトラブルを危惧する地域住民にとっても安心度はより高いといえる。対面による本人確認は、悪意ある利用者を遠ざけるという点でも有用だ。
とはいえ、民泊施設にホストや管理者が常駐しないような場合、対面による本人確認を経たとはいえ、又貸しや申し込み利用者以外の使用などいう“顔の見えない民泊”に陥る可能性も考えられる。いずれにせよ、現場での遵法意識、運用の実効性は今後注目すべきポイントだ。