【著者に訊け】山田ルイ53世/『一発屋芸人列伝』/新潮社/1300円+税
浮き沈みの激しい芸能界の中でも、その高低差が目に見えるほど大きいのがお笑いの世界。毎年のように新顔が現われ、1つのギャグやキャラを武器にして華々しいブレークを果たす。毎日のようにテレビやイベントに出演する彼らの元にはCMのオファーも殺到。その年の忘年会の余興では彼らのギャグを真似する一般人が続出する。
そうやって大きな波に乗った芸人の多くは、その直後に坂を転げ落ちるような大失速を経験する。次の年になれば新たなスターが台頭してきて、前年の売れっ子はお払い箱になる。
ピークを過ぎた彼らに、世間から軽蔑と嘲笑混じりで着せられた汚名は「一発屋」……。山田ルイ53世(43)の著書『一発屋芸人列伝』は、そんな一発屋芸人たちの素顔に迫る渾身のルポルタージュだ。著者の山田自身も、髭男爵というコンビで10年前に大ブレークを経験した一発屋芸人である。
レイザーラモンHG、テツandトモ、とにかく明るい安村など、誰もが知る「一発」を打ち上げた彼らは、その栄光の瞬間に何を思っていたのか? そして今は何をしているのか? 山田の丹念な取材とリサーチによって世の中に知られていなかった彼らの本音が明かされている。
本書は『新潮45』での連載をまとめたもの。連載時から出版業界内では話題になり、「第24回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。