近年、独創的な商品を世に送り出してきたソニーやホンダの「らしさ」が失われているのでは? といった声をよく聞くが、最近はSUBARU(スバル)のクルマにもそこを問う声が増えてきた。特に、熱心なスバル車のファン、俗にいう“スバリスト”からの指摘が多い。
新車の無資格検査や燃費、排ガスデータ書き換え問題で揺れたスバルは現在、企業として岐路に立たされているが、スバルらしいクルマという意味でも大きな転機を迎えているのかもしれない。
話題に上ったのが、昨秋不祥事が発覚して以降で初めての新車となった、看板車種の「フォレスター」(7月19日に発売)。かつては、同社の象徴といえば「レガシィ」、「インプレッサ」、そして「フォレスター」は3番目というイメージが強かったが、世界的なSUVブームの中で「フォレスター」の存在感が一気に押し上げられ、いまやグローバルな販売台数でスバルの最量販車種になっている。
今回の「フォレスター」は1997年に初代が登場してから通算5代目だが、スバルの代名詞になっている水平対向エンジンと四輪駆動に加え、スバリストの心を捉えていたのが280馬力のターボ車、かつドライバーの意のままに操れるマニュアル車のバージョンがあることだった。
ターボとマニュアルが、走りを重視する多くのスバリストたちにとってはいわば“お約束”であり、それがすべてではないものの、スバルらしさを語るうえで重要なファクターにもなっていた。
ところが今回の「フォレスター」は、ターボもマニュアルもともに消えてしまった。それゆえ、スバリストたちからは「凡庸なクルマになった」とか「個性的だったスバルが特徴のないメーカーになった」といった辛口の声が多く聞かれる。