造物主、キリスト教の神などの意味も持つ“Creator”という英単語は、「クリエイター」というカタカナ語になって以降、実に広範囲な職業や属性、人の性質などを多種多様なものを示す言葉となった。2015年4月に始まった『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』は、秋山竜次が様々なクリエイターになりきって、ドキュメンタリー番組の主人公になるシリーズである。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、芸能人YouTuberが軒並み苦戦するなか、秋山はなぜ多くの支持を集めているのかについて考えた。
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YouTuberの活躍でYouTubeでの表現が見直されて以降、タレントも自らのチャンネルを持つことが多くなった。ラジオ風に話したり、コントをしたり、それこそYouTuberのように商品紹介をしたり。「タレントがYouTubeに参入したらYouTuberはヤバい」なんて言われてきたが、現状を見るとそんなことは全くなく。タレントの再生数は人気YouTuberに比べると総じて低い。
本格参戦して分かったのは、YouTubeはガラパゴス諸島のように独特で。そして、YouTuberとはそこで再生数を稼ぐために独自の進化をしたパフォーマーだということ。
苦戦を強いられているタレントのなかで、唯一爆発的なヒットを飛ばしているのがロバートの秋山竜次だ。2015年4月より配信されている『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』シリーズは、新作公開のたびに話題となるコンテンツ。再生回数が100万を超えるもの多い。
シリーズはYouTubeの世界に止まらず、現実世界でも大ヒット。動画に関した展示会を開催すれば、満員御礼といった具合だ。秋山はYouTube内で一人勝ちしている芸人と云えるだろう。
『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』で披露されるのは、クリエイターになりきる現代版百面相。秋山は『情熱大陸』、『プロフェッショナル仕事の流儀』のようなドキュメンタリー番組に密着されているクリエイターに扮し、インタビューに答えていく。
スピンオフ等含めると秋山が扮したクリエーターは50人以上。そのなかには、子役、宇宙飛行士、シンクロナイズドスイミングコーチ、女詐欺師とクリエイターではない人も含まれる。しかし、『クリエイターズ・ファイル』とは、ドキュメンタリーで追われる対象になりがちな職業人を秋山が演じる場。物語性があればクリエイターじゃなくても良い。だから、女詐欺師も対象に含まれる。
演じるにあたり秋山は「事前調査は一切していない」と話す。よって、演じられるクリエイターはフィクショナルな存在となる。しかし、秋山の自信満々の面構えから醸し出されるノンフィクションっぽさ。
「秋山竜次は芸人である」、「『クリエイターズ・ファイル』は動画コンテンツだ」、こんなことを視聴者は百も承知。それでも「本当にこんなクリエイターがいるんじゃないか」と勘ぐってしまう秋山の超絶的な演技力。この才能をエンターテインメントに使っていることを感謝したい。悪用すれば、超一流の詐欺師にもなれるだろう。うそつきな善人、秋山に乾杯。
秋山演じるクリエイターは虚像だが、どこか本質を捉えている。
『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』に秋山がゲストとして招かれた回があった。番組中、秋山はカリスマボイストレーナーに扮して、岡村に高須クリニックのCM曲であるSOFFetの『Beautiful Smile』の歌唱法を指導。そこで秋山は、歌詞よりもノリを重視した歌唱法について熱弁。ノリで歌った方がグルーブ感を演出できると、何度も『Beautiful Smile』を熱唱。
その後、ラジオを聞いた細野晴臣が秋山の音楽センスを高く評価。ライブで秋山ver.の『Beautiful Smile』を流したほどのお気に召したという。瓢箪から駒、秋山の成すことは玄人筋からの評価も高い。