とあるメディアの「宣戦布告」をめぐって世の「おっさん」たちはざわついた。人知れずナイーブな心にトゲが刺さってしまったかのような反応も垣間見られた。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。
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〈あー、またか。みたいな、困った出来事多いですよね、最近。/それ、だいたいの場合、「おっさん」のせいです。〉
そんな書き出しのコピーの上には、大きく〈さよなら、おっさん。〉の見出し。おっさんとしてはギクッとせずにはいられない全面広告が、おっさんのおっさんによるおっさんのための新聞である「日本経済新聞」6月26日付朝刊に掲載されました。
広告主は、ソーシャル経済メディアの「NewsPicks」。ここで言う「おっさん」とは、年齢や性別の話ではなく「この国の、凝り固まった価値観やルールのこと」だとか。要は、「NewsPicks」の有料会員になればダメな「おっさん」になりませんよ、という広告です。
一見、おっさんを全否定する挑戦的なメッセージに、多くのおっさんが反射的に「どういうことだ!」「失礼な!」といきり立ち、ネット上では炎上状態になりました。あえて過激な表現を使った広告主としては、きっとしてやったりです。自称・知性派のおっさんたちが、痛いところを突かれて悔しかったのか、小難しい小理屈をこねて反論したりそれに乗っかったりする極めておっさん臭い光景も、あちこちで繰り広げられました。
この広告が言わんとすることはよくわかるし、若くて元気なメディアが、世にはびこる「おっさん的なもの」に異を唱えるのは大いにけっこうです。しかし、いい意味でも悪い意味でも「おっさん」を舐めちゃいけません。この広告自体から「おっさん臭さ」がにじみ出ていることは、まあご愛嬌だし、何をどうやっても「おっさん」からは逃れられない一例として、そこはあたたかく見守ることにしましょう。
そのへんも含めて、我々おっさんとしては「さよなら、おっさん。」と挑発されたぐらいで、まんまとムカついたら負け。おっさんとしての自信と誇りを取り戻すために、自他ともに「さすがだ、おっさん。」と思えるような要素を見つけたいものです。
せっかくなので、NewsPicksの広告にあげられている悪いおっさんの例をベースにしてみましょう。広告には、こう書かれていました。
〈世の中の変化に対して、見て見ぬふりをする。〉
〈能書きを並べて言い訳ばかりする。〉
〈試そうともせずに、すぐに「できない」とか言う。〉
それぞれ下のようにアレンジすると、おっさんのすごさを表現するコピーになります。
〈世の中や他人のどうでもいい変化に対して、見て見ぬふりができる。〉
〈困ったときは能書きを並べて、周囲や自分自身を言いくるめる。〉
〈試す前に、これまでの経験から「できそうにない」と判断できる。〉