この日、木曽路の宿場町・奈良井宿は、晴天に恵まれた。番組のロケが始まると、老若男女を問わず、握手や写真撮影を求めて人が集まってくる。ひとりひとりに「おじいちゃん、こんにちは」「お母さん、若くて元気だね!」と笑顔で応じるのは、好感度急上昇の出川哲朗だ。
「こうやって皆さんに応援していただけるのは、リアルにありがたくって、しかたがないですよね」
昨年4月に始まった出川の冠番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京など)は、2年目に突入。番組内容は、出川がゲストと共に、フル充電で20キロしか走れない電動バイクに乗り、民家や店で充電をお願いしながら日本全国を旅するというものだ。視聴率は2ケタをうかがうほど好調で、旅先での温かい出会いや、人々との触れ合いが見どころとなっている。そこには、かつて雑誌アンケートで“抱かれたくない男”“嫌いな男”1位に輝いた男の面影はない。
「いやあもう、20年近く前が一番ひどくて、『気持ち悪い』と言われるだけでなく、“出川狩り”といって、チーマーから『やっちまえ!』と追いかけられて、身の危険を感じることもありました。家にいても“ピンポンダッシュ”されて眠れないし、玄関の覗き穴のガラスを壊されて、覗こうとした途端にキリが差し込まれたこともあったんです。警察に行くと、『怪我をしないと事件になりません』って。そりゃないでしょ」
もともと俳優志望だった出川は、高校を卒業後、地元横浜で映画の専門学校に入学する。役者を目指すうち、専門学校の同級生だったウッチャンナンチャンが売れ始め、彼らのバラエティ番組に呼ばれるように。そこで見せた自然なリアクションが面白いと評価され、バラエティの魅力に目覚めていく。以後多くの番組に出演し、体を張ったリアクション芸を確立していった。