カジノを含む「IR(統合型リゾート)実施法案」が衆議院で可決され、ついに日本の“民営ギャンブル”が動き出した。安倍晋三政権は、IRを成長戦略の一つと位置付けている。しかし大前研一氏は、日本でカジノによる経済活性化はあり得ない、と断じる。
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今国会で議論された「IR実施法案」の主な内容は、
・IRを全国で最大3か所整備する
・日本人客のカジノ入場は料金6000円を徴収して週3回、月10回までに制限する
・カジノ収益の30%相当を国が納付金として徴収し、入場料収入と合わせ立地自治体と折半して観光振興やギャンブル依存症対策の財源に充てる
──というものだ。しかし、カジノ問題の本質は野党らが主張したような依存症対策などではない。カジノは、世界的に見れば、もはや「斜陽産業」である。そこに日本が今からのこのこと参戦しようとしていること自体が問題なのだ。
たとえば、ニューヨークから車で2時間くらいで行けるニュージャージー州のカジノ都市アトランティックシティでは2014年以降、トランプ大統領が経営していた「トランプ・プラザ・ホテル・アンド・カジノ」や「トランプ・タージ・マハル・カジノ・リゾート」をはじめ、カジノがドミノ倒しのように次々と破綻した。