【著者に訊け】山崎ナオコーラ氏/『偽姉妹』/中央公論新社/1700円+税
思えば2004年のデビュー作『人のセックスを笑うな』に、こんな一節があった。〈木の枝と枝の、間の空。あれは存在しているのだろうか〉〈巨大な空と、枝に囲まれた小さな空は、別物だ〉〈囲んだ途端に、風景は切り取られる〉──。
一方この女性たちはどうか。シングルマザー〈正子〉、元職場の先輩〈百夜〉、ウクレレ教室で出会った7歳下の友人〈あぐり〉に当然血縁はない。それでも3人は正子が建てた〈屋根だけの家〉に住み、正子の息子〈由紀夫〉を一緒に育てている家族であり、『偽姉妹』なのだ。
そもそも偽姉妹を名乗る前から3人の関係は存在し、その名前を超越した可能性まで、山崎ナオコーラ氏は本書で標榜してみせる。帯に〈家の中から“明日”を変える長篇小説〉とあるが、小説とはかくも革新的で、社会的なものだった!
着想はなんと、叶姉妹と阿佐ヶ谷姉妹だったという。
「元々は他人同士の女性たちが、姉妹ユニットを組み、社会的に活動していることが、私には血縁を超えた新しい家族の作り方を体現しているように思えたんです。しかも世間には、美人は美人同士、ブスはブス同士でくっつけみたいな圧力があって、美人とブスが友達だと損得目当てとしか見てくれない(笑い)。でもブスと美人でも普通に親友になれるし、そもそもブスという言葉も私はもっとフラットに使いたくて、この姉妹交換の話を書いたんです」