関東甲信地方で平年より1か月近くも早い6月中に梅雨が明けてしまうなど、地球温暖化の影響で年々厳しくなる夏の猛暑。うだるような暑さの中、家庭でも職場でもエアコンは欠かせないが、意外にも子供たちが日々通う学校のエアコン設置率は低い。
昨年、文部科学省が全国の公立小中学校の教室で冷房が設置されている割合を調査したところ、41.7%(2017年4月1日時点)と半数にも満たないことが明らかになった。調査を開始した1998年度と比べれば6倍以上に伸びてはいるものの、いまだに扇風機で暑さをしのいでいる学校も多い。
「昔は小学校にエアコンなんてついていないのが当たり前でしたが、いまは普通に35度を超える猛暑日もありますし、いくら扇風機を回しても熱風が吹いてくるだけ。日の当たる窓際の席の子はぐったりしていて、あれでは勉強にも身が入らないでしょう。
東京の公立学校はエアコンの設置率が100%に近いといいますが、エアコンがついている学校とついていない学校とでは、子供の健康状態はもちろん、学力格差も出てしまわないか心配です」(茨城県内の小学校PTA役員)
確かに、前出の調査で都道府県別のエアコン設置状況(普通教室)を見てみると、関東でも東京が99.9%なのに対し、群馬85.7%、神奈川79.0%、埼玉76.0%、栃木73.3%、茨城50.8%、千葉44.5%と地域によってバラツキがあることが分かる。なぜ、ここまで設置率に差が出るのか。
「ひとことで言えば小中学校を所管する自治体の“懐具合”の差です。財政的に苦しい市区町村は、多くの学校に対してエアコンの設置費用や電気代などランニングコストを負担するだけの余裕がありませんし、老朽化が進んでいる学校の耐震補強などをするほうが優先と、なかなかエアコンまで予算が回らないのが実態です。
また、かつては『暑さや寒さに耐えることを学ぶのも教育』といってエアコン設置に反対する地方議員や子供の親もいましたが、さすがに今は少なくなりました。熱中症対策や学力向上策として小中学校のエアコン整備を急ぐ自治体は増えています」(教育専門誌記者)
折しも文科省は今年4月、小中学校や大学の教室の室温基準などを定めた「学校環境衛生基準」をおよそ50年ぶりに見直し、これまで「10度以上30度以下」としていた望ましい室温を「17度以上28度以下」に変更した。これも“エアコン慣れ”した子供たちの体調管理や熱中症対策を考えてのこと。
だが、小中学校のエアコン設置が進むにつれて別の問題も起きている。夏休み期間の短縮だ。