臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、オウム事件での死刑が執行されたことを受けて会見を開いた上祐氏に注目。
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7月6日、地下鉄サリン事件などオウム真理教による一連の事件で、死刑が確定していた教祖、麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚ら7人の刑が執行された。それを受けて事件当時、教団幹部だった上祐史浩氏が会見を開いた。
オウム真理教の後継団体「アレフ」から分派した「ひかりの輪」の代表である上祐氏。一見すると穏やかそうな印象を受けるだろうが、地下鉄サリン事件以降、教団のスポークスマンとして詭弁をろうし、「ああ言えば上祐」と言われたほど饒舌で攻撃的だった男だ。あの事件を知らない世代にとっては、かつての彼の姿は想像もつかないだろう。だが、あの事件をリアルに見ていた者にとっては、今の彼に違和感を覚えたのではないだろうか。
死刑執行をどう受け止めたかという問いに、上祐氏は真っ先に「被害者賠償契約を締結した日から9年目」を強調した。「ひかりの輪」はオウム被害者への賠償やアレフによる洗脳からの脱却を支援する団体として、オウムやアレフとは一線を画していると強調したいのだ。
だが本当に彼はオウムと決別したのだろうか…?
そう思うと、会見を見ながらも「実は違うのではないか?」という証拠を自然と探してしまう。このように自分がそうだ、正しいと思っていることを確かめるための情報は集めるが、それを反証する情報には注目しないという傾向を「確証バイアス」という。おそらく多くの人が、私と同じような確証バイアスを持って、あの会見を見たのではないか。
ということで、自ら確証バイアスがあることを前提にした上で、会見の中でいくつか気になる点を見つけた。
上祐氏は死刑執行については、自らの思いや感情を何も述べてはいない。そのような質問を「賠償締結の日」という答えでかわしていたのは、心の中にそれに対する抵抗があるように思えてくる。だから彼の本当の感情も本音も見えてこない。記者たちも、それ以上突っ込んだ質問をしようとはしなかった。
だが、感情的にはかなり揺れていたのだろう。「執行」と言う言葉につかえたり、「死刑執行を受けて」と言う時に、顔の左側だけが歪んだ。