ペットを飼っている人にとって、愛犬や愛猫は家族も同然。死ぬと葬儀を営んだり、お墓を建てる人も少なくない。そんななか、ペットの医療過誤裁判で下された判決が大論争を巻き起こしている。
「子供がいない私たち夫婦にとって、『こっちゃん』(雌の秋田犬・8歳)は娘そのもの。人間の子供と同じように認めてほしいという思いがあったので、この判決にはどうしても納得できません」
愛犬が獣医師の診断ミスによって死んだとして、損害賠償を求める裁判を起こしていた福岡市在住の女性(63)は、憤懣やる方ない様子でこう語った。
女性は獣医師に180万円の損害賠償を求めたが、6月29日に福岡地裁が下した判決は「約60万円」。その内訳は、慰謝料40万円、(これまでに支払った)治療費約15万円、葬儀費用3万8000円だった。
この判決に対して、全国の愛犬・愛猫家から“遺族”に同情する声が相次いだ。明治大学文学部教授・齋藤孝氏はこう主張する。
「前に飼っていたワンちゃんが亡くなった後は、喪失感に苛まれ、まったく生きる活力が湧かない日々が続きました。いま飼っている犬は、子供が独立し、夫婦2人きりになった寂しさを紛らわせてくれる。そんな存在の命の代償が60万円と言われても、納得し難いです」