6月30日に世界文化遺産の登録が決まった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、江戸幕府によるキリシタン禁制下で、ひそかに信仰を守り続けた潜伏キリシタンによる独特の文化的伝統を示す遺産群だ。
1549年に国内で布教が始まって以降、キリスト教は最盛期には全国で40万人もの信徒を抱えたといわれている。ところが、国内統一が進む過程で取り締まりの対象となり、1610年代から宣教師や信徒が処刑されたり、絵踏で信徒をあぶり出したりするような過酷な弾圧が各地で行なわれるようになった。
信徒は信仰が露見しないよう神道や仏教など既存の宗教を装い、あるいは共生しながら独自の宗教的伝統を育み、17世紀から19世紀にかけて信仰を貫いた。今回の遺産は、こうした厳しい禁教時代における信仰の維持と変容、そして、1873年にキリスト教が解禁され潜伏が終焉を迎えるまでの間に信徒が受けた苦しみや暮らしぶりなどを赤裸々に物語る、12件の資産で構成されている。
■取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2018年7月20・27日号