●ケース2「上司のパワハラがあまりにもひどい。会社は嫌いではないが、もう耐えられそうにない……」
三矢「会社は嫌いではないということは、会社の体質ではなく、その上司がひどいヤツということなんですよね。今は辞めることしか考えられないかもしれないけど、『上司はそのうち代わる』ということは頭の隅に置いておきましょう。イヤな上司のために自分が犠牲になる必要はありません。それに、もう辞めてもいいと思っているなら、じつは力関係は逆転しています」
辞めるつもりならクビは怖くないし、出世を気にする必要もない。居心地が悪くなっても平気です。開き直ってパワハラ上司に立ち向かっても、どうってことありません。暴言を吐かれたら「今の言葉は撤回してください」と冷静に返し、納得のいかない指示はとことん説明を求めましょう。上司の発言を録音したり行動を記録したりして、会社の上層部や公的機関にチクるのも一興です。
三矢「パワハラは、されている側の冷静な判断力を奪ってしまうんですよね。パワハラを直接裁く法律は残念ながらありませんが、いったん落ち着いて、自分にとって大切なものは何かを考えて、それを守るための行動を起こしましょう」
サービス残業にせよパワハラにせよ、黙って耐えていても何も始まらないし、誰もホメてはくれません。しかし、会社はバカなくせに百戦錬磨。丸腰で向かっていくには手ごわい相手です。丸め込まれずにギャフンと言わせるには、どんな武器が必要なのか。
三矢「まずは知識ですね。日本の労働者は、多くの人が思っている以上に制度や法律で守られています。どこにどう相談すればいいのか、戦い方を知ることも大切。それと、イザというときにあなたを守ってくれるのは、日頃の人間関係です。職場で孤立している状態では、誰もいっしょに戦ってはくれないし、有利な証言も期待できません」
仕事で困っている同僚がいたら、今までのように見て見ぬフリをするのではなく、そっと救いの手を差し伸べたいところ。セクハラもどきの言動はキッパリやめて、すべての女性社員に等しく敬意を持って接することも大切です。まあ、そのへんは徐々にがんばるとして、とりあえずは近くの席の同僚や後輩を誘ってビールでも飲みに行きましょう。おっさんなりの努力を地道に重ねれば、とくに戦う状況にはならなかったとしても、会社の居心地は確実によくなるはずです。