通常のドラマは1クール1時間×10回前後。対して朝ドラは放送時間は15分と短いとはいえ概ね150回の長丁場だ。好評を博したとしてもそれを継続させるのは容易いことではない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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「漫画家編はよかったのに。秋風先生が出なくなってガラリと雰囲気が変わってしまった」「半年という長期間、脚本を緻密に描き続けるのは酷な要求ということなのか」
NHKの連続テレビ小説『半分、青い。』が「人生・怒涛編」に突入し、視聴者の間に微妙な空気が流れています。7月初旬までの「東京・胸騒ぎ編」が大きな注目と評判を集めたことはたしかです。有名漫画家で鈴愛の師匠・秋風羽織(豊川悦司)のセリフが一つ一つ心に響く、とSNSでも話題になりました。
秋風の才能は溢れんばかり、しかし発するコメントは辛辣でストレート、生き方は勝手気ままでどこか不器用、その心根はピュアで優しいという「大人物」。豊川悦司さんが緻密に練り上げた人物造形と演技で、個性的な秋風羽織像が鮮やかに立ち現れたのでした。
加えて、漫画家修業をする鈴愛の格闘ぶり、仲間たちとの友情、才能がないと悩む姿あたり、まさしく「青春ドラマ」のみずみずしさがあった。ところが……。秋風が姿を消すと本当に秋風が吹き始めた?
鈴愛が漫画家を諦め100円ショップの店員となった「人生・怒涛編」からの評判は厳しいものが目立ちます。物語の内容も行き当たりばったり。たった6日で結婚を決めたかと思うと、家族を説得したり式や披露宴をしたりするシーンもろくになく、時系列も心理描写も飛躍し重要な部分を端折る。その一方で、「結婚式の白無垢姿でずっこける」「お茶を点てている叔母が着物姿で3回転ぶ」と妙にベタなコント風シーンが存分に盛り込まれ、無理に笑わせよう(笑えませんが)とする狙いが今一つわからない。いったい何を描こうとしているのか、どこへ向かうのか。
とまどうのは「東京・胸騒ぎ編」とのあまりの違いです。本当に同じ脚本家が書いているのかと不思議に感じるほど。……なのですが、一つだけ変わらない点がある。今のところ「助け船」になっているように思えます。鈴愛の祖母である廉子・風吹ジュンの、独特のナレーションです。
早々に亡くなってしまった廉子。天国から家族を見守っている設定でのナレーション。言葉の速度はゆったりと、たゆたうよう。声の張り方は引き気味。それが全体を俯瞰している人の落ち着き感を醸し出しています。