韓国のテレビ番組といえば日本でも放送されるドラマを思い出す人が多いかもしれない。最近はK-POPグループのメンバーを選抜するオーディション番組がネットを通じて大変な人気だ。K-POP のガールズグループ(GG)のディープなウォッチャーでもあるライターのまつど☆たまき氏が、日本でも人気のTWICEメンバーを選抜した番組『SIXTEEN』を中心に、司会のパク・ジニョンJYP社長の思想を反映した過酷なオーディション番組の在り方についてやさしく解説します。
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5月発売のBTS(防弾少年団)の最新アルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』が全米ビルボード・アルバムチャートで初登場1位に輝いたのは、K-POP史上初の快挙となりました。今や、エンターテインメントの世界首都であるアメリカでも、K-POPアイドルの一糸乱れぬ超高度な集団ダンスと歌唱力はおどろきをもって迎えられているようです。
K-POPスターを目指す少年少女の大半は、十代の初めから練習生として芸能事務所と契約し、何年間も徹底した技能訓練を施されます。その間は無給で、デビューできる確約もないまま、明日のスターを夢見て茨の道を歩むことを選びます。その厳しい弱肉強食の構図をそのままリアリティ番組として放送するのが近年の韓国では流行していますが、あまりの過酷さから「サバイバル番組」とも呼ばれています。
◆奇跡のサバイバル番組『SIXTEEN』
現在日本でも大人気のガールズグループ「TWICE」のメンバーも、そのサバイバル番組『SIXTEEN』(Mnet 2014年5月放映開始)によって、16人の練習生から選抜されました。
もともと同番組は、韓国3大芸能事務所の一角JYPからデビューする予定だった「6 MIX」というグループの、優秀なメンバーたちをなんとかサルベージするために企画されました。2014年4月に起きたセウォル号沈没事故による強い自粛ムードなどでデビュー予定がなくなってしまった彼女たちを、優秀な練習生のまま埋もれさせないためです。
(TWICEのネーミングの由来は、公式には「良い音楽で一度、素敵なパフォーマンスでもう一度感動をプレゼントする」だと言われていますが、一度はチャンスを失った彼女たちに、“二度目のチャンス”を与えようというこの企画の趣旨がこっそり埋め込められていたのではないかと、筆者は睨んでいます。)
番組の司会を務めたのはJYPの社長兼現役アーティスト、パク・ジニョン氏。そのゴツゴツした容姿とは裏腹に、ジェントルでユーモアに溢れたギャップ萌えを誘うTVタレントとして親しまれており、大好物のお餅(トック)にちなんだあだ名「餅ゴリ(ラ)」のほうが有名な名物社長です。(TWICE『KNOCK KNOCK』のPVには、夜中に枕を抱えてナイトキャップ&パジャマ姿で女子寮のドアをノックする迷惑なオッサン役で登場しています。)
『SIXTEEN』では、参加メンバーが強制的に、合格予定者7名の「メジャー」と失格者9名の「マイナー」の2チームに振り分けられてすすみます。第一回ではスタッフ評価の結果として、練習生生活10年でTWICE現リーダーのジヒョが「マイナー」通告をうけておもわず落涙、同じく今ではTWICEリードボーカルのジョンヨンも「マイナー」からのスタートを強いられます。一方でJYP所属一年たらず、パク氏の記憶にもなかったミナ(TWICEではメインダンサー)がいきなり「メジャー」入りするなど、大波乱の幕開けとなりました。
番組の過酷さはそれだけにとどまりません。チームのネーミングどおり、MLBの一軍と二軍のように番組収録時の移動バスや宿泊施設などにも差がつけられ、練習部屋の使用時間もメジャーは朝9時~夜9時までの通常枠、マイナーはそれ以外の深夜を強いられる──プロフェッショナルとして「銭になる」者だけが好待遇を受けることができるという構図を浮き彫りにします。
そして毎回、番組の終盤ではマイナーからメジャーに昇格を告げられたメンバーが、自分の代わりに誰がマイナーへ行くのかを指名する場面があります。このとき指名されたメンバーは、メジャー7名の特権を保証する「SIXTEEN」のペンダントを外して、昇格者に渡さねばなりません。