日本映画製作者連盟の統計によれば、2017年のシネマコンプレックス(複合映画館)以外の通常映画館のスクリーン数は429。2000年に比べて3分の1以下に激減している。街中のミニシアターが消えていく昨今、時代に抗い、閉館した映画館を再生させようと奮闘する男性の活動に、映画文化の光を見た。
「寂しいよねぇ。私だけじゃなくて、息子も娘もずっとここでお世話になっていたから。文化の灯っていうのかな。それが消えちゃった気がしてね…」
初老の男性が、古びた建物の前でそうつぶやく。神奈川県横浜市屈指の商店街イセザキ・モール(横浜市中区伊勢佐木町)でただ1つ残るミニシアター(独立映画館)『横浜ニューテアトル』が、6月1日に閉館した。
前身となる『テアトル横浜』のオープンから63年。昭和の全盛期には伊勢佐木町内に40館あったミニシアターは、時代とともに次々と閉館し、最後の1つとして営業を続けていた横浜ニューテアトルが閉館したことで、同モールから映画館が消えた。
5月27日に都内の老舗映画館『渋谷シネパレス』が閉館し、6月30日には、宮城県仙台市で唯一地元資本で営業していた『仙台セントラルホール』も閉館。日本全国で「街中の映画館」が消えていくなか、時流に抗い、ミニシアターを残そうと奮闘しているひとりの男性がいる。
株式会社シーズオブウィッシュ代表の青山大蔵さんだ。映画宣伝会社の社員だった青山さんは、潰れゆくミニシアターを再生させ、地域に新たな光をもたらしている。
2014年に神奈川県厚木市にオープンした映画館『アミューあつぎ映画.comシネマ』は、彼の事業を象徴する。
2008年に閉館した『厚木テアトルシネパーク』の跡地を舞台に、地域行政と組み、公共施設として映画館を再生したところ、高齢者を中心に地域住民の集うコミュニティーとして大いに賑わっているのだ。
「スクリーンは3つで、チケットは通常の料金体系に加えて1回500円で鑑賞できる会員制度もあります。今では約6500人の会員に年間平均30本以上も観ていただいております。全国の平均は年間1~2本ですから、うちの会員の皆さまにとって、映画を観ることが日常になっていることがわかります。これは本当に嬉しいことです」
そう語る青山さんの事業は、ミニシアターの未来を照らすものだ。
◆極端なことを言えば映画を観に来なくてもいい
青山さんは映画宣伝会社の社員時代、仕事の傍ら通っていた大学院で、「渋谷のミニシアター再生」をテーマに修士論文を執筆。これが東急電鉄の目にとまったことで人生が変わった。