国内

震災後原子力関連ツイート続けた東大教授が自らに課した制約

原子物理学者で現東京大学名誉教授の早野龍五さん

 2011年3月、東日本大震災に伴う福島原発事故という未曽有の事態で、大活躍したのがツイッターだった。

《Cs137が出す662keVのガンマ線を確認したという意味か.福島第一原子力発電所》

 震災から一夜明けてから、こうつぶやいたのは当時、東京大学大学院の物理専攻長だった早野龍五さん(現東京大学名誉教授)だ。彼はこのツイートをきっかけに、原子力関連のつぶやきで自身のタイムラインを埋め尽くした。

「もともと、ツイッターは学生や他の教授たちとのコミュニケーションツールとして使っていました。原発事故が起きた時もその延長で、自分で調べた内容をツイートしていたんです」(早野さん)

 原子力という目に見えない脅威を前に政治家たちは右往左往し、専門家も口をつぐんだ。そんな中で真摯に、批判を恐れず発信し続ける早野さんのツイートは多くの人に拡散された。

 震災前に二千数百人だったフォロワーは震災翌日に2万人を超え、1週間後には15万人になった。大学からは「混乱を招く可能性があるから黙ってくれ」と忠告されたが、聞く耳を持たなかった。

「最初から使命感があった訳ではありません。だけど、フォロワーが爆発的に増えたことや、『先生が東京にいる限り私も逃げません』というメッセージをもらったことから、『自分は科学者として何をできるのか』と考えるようになりました。もともと税金からいただいた研究費をいつか納税者に還元したいと思っていた。それが今なのかもしれないという気持ちから、できる限りの情報発信を続けました」(早野さん)

 実名での発言を重ねていた早野さんは社会的影響力の強さを自覚して、いくつかの制約を自らに課した。

「まず注意したのは、事実に基づくことだけを発信すること。情報源を明示して、誰でもニュースソースを辿ることができるようにしたり、新聞やテレビがツイッターで流すニュースをリツイートする時は、見出しだけでなく必ず中身を確認することを心がけるようにしたり。また、SNSは所詮ヴァーチャルの世界で人と人が戦う場ではないことを意識し、失礼な言葉や攻撃的なツイートを避けて、批判や誹謗中傷には一切返事をしませんでした。感情に流されそうになった時は、“一息入れてからのツイート”を肝に銘じるようにしました」(早野さん)

 もう1つ胸に刻んだのは、「早野龍五という人間を伝えること」だった。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン