現在、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)、『マツコの知らない世界』(TBS系)、『5時に夢中!』(TOKYO MX)など8本のテレビ番組レギュラーを持ち、“視聴率男”の異名を取るマツコ・デラックス。エム・データ調べの『2017年テレビCMタレントランキング』によれば、昨年の年間CM会社数は8社。女性部門で石原さとみ、北川景子、桐谷美玲、白石麻衣(乃木坂46)、新川優愛と同じ数字になる。
数十年前からテレビ界では、カルーセル麻紀やおすぎとピーコなどいわゆる“おネエタレント”が活躍していた。しかし、マツコのようにゴールデン帯でレギュラーの冠番組を持ち、恒常的にCMに出続けるのは異例中の異例だ。
なぜ、現代の日本社会に受け入れられているのか。社会学者で、『マツコの何が“デラックス”か?』(朝日新聞出版)の著者である太田省一氏に話を聞いた。
──なぜ、マツコについて書こうと思ったのでしょうか?
「大衆に支持されているきわめてメジャーなタレントなのに、ゲイで女装家という社会的にはマイノリティと見なされる属性を持っている。その意味では、矛盾しているようにも見える。そんなマツコ・デラックスがなぜ、今の時代にこれほどの人気者になったのか。それを探り当てたいと思いました」(太田氏。以下「」内同)
──昭和の頃は、幸福感溢れているように見える人が人気者だったように思います。
「戦後まもなくの美空ひばり、高度成長期の石原裕次郎、1980年代の松田聖子や田原俊彦など、本人たちの実人生には色々とあったかもしれないけど、ブラウン管やスクリーンのこちら側から憧れを抱く存在でした。