「横綱という地位は、相撲界の看板だと考えていた。15日間、横綱として恥ずかしくない成績を挙げなければならない。引退するまで、常にそう思って相撲をとってきました」
昭和の大横綱・大鵬は生前、本誌にそう語っていた。今の横綱たちに、その言葉はどう響くのだろうか。
息苦しいほどの酷暑に列島が見舞われる中、名古屋場所が幕を下ろした。だが、千秋楽の土俵上に、上位陣の姿はなかった。
初日から3連勝していた横綱・白鵬は右膝を痛めて4日目から休場。勢(前頭2)、阿炎(前頭3)に金星を連続で配給した横綱・鶴竜は6日目から右肘の怪我を理由に姿を消した。横綱・稀勢の里は全休。3横綱全員が土俵から消えたのは、1999年3月場所以来19年ぶり。その時の3横綱は、貴乃花、若乃花、曙だった。戦後3回しかない異例の事態で、当時の時津風理事長(元大関・豊山)がお詫び会見を開いたほどだった。
さらに今場所は、史上6人目の「昇進場所優勝」が期待されていた新大関・栃ノ心までもが、6日目に小結・玉鷲の小手投げに屈して右足親指を痛め、戦線を離脱してしまった。大関昇進場所での休場も、18年ぶりの異常事態だった。