1984年、ひとりの若者が自身の体験を1冊の本にまとめた。タイトルは『馬のゴン太旅日記』(小学館)。その名の通り、冒険好きな大学生・シマくんが道産子と呼ばれる馬のゴン太にまたがり、北海道・函館から九州・鹿児島まで、日本を縦断した113日間の記録だ。
作品は『第7回絵本にっぽん賞』を受賞、『全国学校図書館協議会選定「よい絵本」』に選ばれ、ロングセラー絵本として親しまれてきた。これが冒険物語『馬のゴン太の大冒険』となって帰ってきた。この物語に多くの著名人が心打たれている。その感動の声の一部を紹介しよう。
◆「シマくんの心を入れ替えたゴン太の優しさ」萩本欽一さん
ぼくは馬が大好きで、ずっと中央競馬の馬主を続けてきました。馬って不思議なんですよ。ぼくが『欽ドン!』(フジテレビ系)や『欽ちゃんのどこまでやるの!』(テレビ朝日系)で高視聴率をあげ、「視聴率100%男」といわれていた時期は、まったく走ってくれませんでした。
けがをしたり、賞金も稼いでくれません。でも、ぼくの仕事がうまくいかない時期は「欽ちゃん、大丈夫! ぼくたちが稼ぐから」って大活躍してくれたんです。
主人公のシマくんって、最初はゴン太の世話をまったくしません。『欽ドン!良い子悪い子普通の子』でいえば、ワルオです。それがゴン太との旅の中で、フツオになり、ヨシオになり…。競馬にたとえれば、騎手のシマくんと競走馬のゴン太が北海道をスタートし、ついには鹿児島のゴールまで苦楽を共にしながら駆け抜けるのです。感動的なシーンの数々に胸を打たれます。
そして最後には「何でそうなるの!」というどんでん返しが…。
◆「豊かな心は人生の同伴者があってこそ」武田鉄矢さん
「人馬一体」という言葉があります。乗り手である人が、馬を巧みに乗りこなしているという意味合いで使われる言葉ですが、本当は馬と人間が別の生き物に変身したいという願望。それが四字熟語になったものなんです。
そうやって考えてみると、人間の欠点も、動物の欠点もお互い別々の生き物になってみないとわからない視点って、きっとあるんじゃないでしょうか。
また、この本を読んで、つくづく人生の同伴者というものを持てるか持てないかっていうことが、いかに大切かということも考えさせられました。共に苦労や喜びをわかちあい、心底から信頼し合える存在。それこそが自分の人生において、心の豊かさを左右していくんじゃないかなと感じたんです。
そういう意味では、お子さんたちはもちろん、これから人生という大海原を泳いでゆく、若い世代にひとつの提案をもたらす本だと思います。
ぜひ、手に取ってもらいたいですね。