夏の甲子園出場をかけ、全国の球児たちが連日、地方予選で熱戦を繰り広げている。その最中、甲子園の「常連校」は既に、今年だけでなく、来年、再来年、そして3年後の甲子園を見据えた“もうひとつの戦い”を水面下で進めている。強豪校が将来有望な中学生選手を“一本釣り”すべく動く現場を『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』著者でノンフィクションライターの柳川悠二氏が追った──。
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U-15侍ジャパンのトライアウト九州会場には、横浜高校の参謀として甲子園通算51勝の渡辺元智元監督を支え、松坂大輔(現・中日)らを育て上げた小倉清一郎氏の姿があった。
現在の小倉氏は全国の高校を巡り、球児の指導にあたっている。今回も、臨時コーチを務める熊本・城北の監督と共に来場していた。
甲子園に春夏通算7度出場している城北も、昨今は秀岳館や九州学院、伝統校の熊本工業の後塵を拝している。巻き返しをはからんとする城北の監督は、選手への指導のみならず、勧誘においても、名伯楽を頼ったのである。
「ろくなヤツはいねえな」
小倉氏の口の悪さは相変わらずだ。しかし、突如として目を見開いたのが、シート打撃のマウンドに左腕の金井慎之介投手が上がった時だった。とにかくフォームが美しく精度の高いコントロールが際立っていた。