NHKの朝の情報番組『あさイチ』が、西日本豪雨についての報道で注目を集めている。他局のワイドショーと一線を画すその報道姿勢についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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7月初旬に発生した西日本豪雨は200人以上の犠牲者を生むなど、甚大な被害をもたらしました。各メディアが雨の情報だけでなく、土砂災害、河川氾濫、家屋浸水、インフラ停止などを報じましたが、なかでも異彩を放っているのが『あさイチ』(NHK)。6日に第一報を扱って以来、現在まで約3週間に渡って、朝ドラ直後で最も視聴者の多い番組トップで、さまざまな情報を発信しているのです。
その内容は、6日は「大雨と土砂災害の危険性」、9日は「被害状況と気をつけたいこと」、10日は「最新報告と支援が必要なこと」、11日は「被災地の熱中症予防」、12日は「被災者の健康」、13日は「ボランティアへ行く前に」、放送のない土日、祝日を挟んで17日は「断水や通行止めなどの被害状況」、18日は「ボランティアの心得」、19日は「産業廃棄物と女性の声(不安やストレス)」、20日は「被災した寺の現状」、土日を挟んで23日は「目の感染症と子どもの居場所(心のケア)」、25日は「農業被害」、26日は「特産品の魚への被害」と、日替わりで多岐に渡ります。
また、被災地からの中継も、岡山県や広島県などの他メディアが報じているエリアに加えて、離島の因島、四国の愛媛県宇和島や大洲、高知県安芸や仁淀川の状況もピックアップ。さらに、6日から17日までファンが多い「朝ドラ受け」を自粛するなど、「何よりも優先的に放送すべきこと」「本当に心配している」という意志表示をするような姿勢を続けています。
◆ワイドショーよりも内容の調整が難しい
もともと『あさイチ』は、同じ時間帯に放送されている民放のワイドショーとは一線を画す内容の番組。基本的にワイドショーのようなその日のニュースではなく、衣食住、趣味、人間関係などの生活情報をランダムに採り上げて放送しています。
NHKらしく、「じっくり企画を練り、丁寧に取材を重ねてVTRを作り、生放送のスタジオに専門家を迎えて放送している」ため、内容の調整・変更はワイドショーの何倍も困難。今回のように、西日本豪雨のコーナーを作り、連日放送するのは難しいのですが、「それでもやろう」という姿勢は、誠実さの表れではないでしょうか。
過去を振り返ってみても、『あさイチ』は2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震などのときも、さまざまな角度から情報を提供していました。それらの経験を踏まえた上で、「できる範囲の支援をしよう」「正しい情報、足りていない情報を届けよう」「発生直後だけでなく長い目で見て支援しよう」という姿勢を貫けるのでしょう。
『あさイチ』は今年4月に井ノ原快彦さん、有働由美子アナ、柳澤秀夫さんが番組を卒業して、博多華丸・大吉と近江友里恵アナにバトンタッチ。メンバーが一新されたことで、不安視されたときもありましたが、このような井ノ原さんらが培った「誠実さ」をしっかり受け継いだことで、時間帯トップの視聴率を保ち続けています。
◆民放のワイドショーは数日間でトーンダウン