健康長寿を実現するために「食事」が重要な要素であることは間違いない。だが注意すべきは、加齢によって「食べてはいけない食品」と「食べていい食品」が変化することだ。アンチエイジングを専門とする白澤抗加齢医学研究所の白澤卓二氏が指摘する。
「年齢を重ねれば健康長寿に必要な栄養素や、身体の栄養摂取や排出のメカニズムが変わってくる。そのため、若年や中年の頃とは異なる食事の仕方が必要になります。ゆえに65歳以上をシニアと一括りにするのではなく、年齢に応じたきめ細やかな対策が必要になります」
なかでも、高齢者が摂取に対する考え方を変えたほうがいいのは「肉(たんぱく質)」だとする研究結果がある。
米・南カリフォルニア大学長寿研究所のバルター・ロンゴ教授らによる、「たんぱく質の摂取と死亡率の関係」についての報告がそれだ。50歳以上の米国人男女6381人を、たんぱく質の摂取量によって3つのグループに分けて18年間追跡した同調査によれば、50~65歳では、たんぱく質を最も多く摂取するグループは、最も摂取量が少ないグループより死亡率が74%高く、がんによる死亡リスクも4倍まで増加した。
しかし、65歳以上になると、たんぱく質を最も多く摂取するグループは、他のグループよりも死亡率が低くなったのだ。白澤氏が解説する。
「『高齢者ほど粗食がいい』という考えは間違いです。肉を抑える食事が必要なのは生活習慣病になりやすい40~50代であり、65歳以上の高齢者は重要なたんぱく源である肉を食べたほうがいい。粗食になると栄養が不足して、むしろ老化が進む恐れがあります」