欧米では承認されているが、日本では未承認のがん治療法は少なくない。例えば、シカゴ大学名誉教授の中村祐輔医師による「ゲノム解析+免疫療法」は日本人が開発リードしたにもかかわらず、日本国内では承認されていない。
日本で受けられる医療は、安全性と有用性を確認したうえで国が承認した「保険診療による治療」と「保険適用外の治療」がある。前者の中で特に効果が認められるものは「標準治療」と呼ばれる。
保険適用外の治療は「治験」によって安全性や有用性を明らかにして、厚労省から承認を得て保険が適用される。さらに治療効果が優れていることをはっきりさせる臨床試験を行うなどして、ようやく「標準治療」に昇格する。
実際にがんと闘っている患者が第一の選択肢とすべきは「標準治療」だと多くの専門家は口をそろえる。
「日本で承認を受けて保険適用となっている標準治療には客観的なデータに基づいたエビデンス(科学的な根拠)があります。それゆえ、治療の第一選択肢は標準治療とすべきです」(医療経済ジャーナリストの室井一辰さん)
ただし、標準治療だけでは進行するがんに対抗できないケースもある。
医学的な効果が確立していなくても、がんに直面した患者や家族が藁にもすがる思いでこうした医療を望むことは理解できるはずだ。その場合にまず検討したいのが「先進医療」だ。
特定の大学病院などで研究開発されて実施される医療の一部を、厚労省が「先進医療」に指定している。先進医療の費用は全額自己負担となるが、診察代や投薬代など一部に医療保険が適用される。
「先進医療は厚労省が効果を期待する治療法であり、もし標準治療が効かない場合、検討してもいい治療だと思います」(室井さん)
現在、がん治療としては「陽子線治療」や「重粒子線治療」などが先進医療として承認されている。しかし、前述の最先端治療「CAR-T治療」や「免疫チェックポイント阻害薬」は、先進医療にも指定されていない。
◆「今年度中には治験を始めたい」
それらの“夢の最先端治療”はどうすれば受けられるのか…大まかに以下の3通りの方法がある。1つ目は、前クールで話題を呼んだ『ブラックペアン』(TBS系)で治験コーディネーターである加藤綾子が紹介していた「治験」に参加する方法だ。
治験を行う大学病院などは、副作用に備えて綿密なバックアップ体制を構築し、病状が悪化したらすぐに治療を中止することが求められる。治療効果は必ずしも約束されないが、患者の安全を守るためのさまざまな仕組みが規定されている。
しかも最近は、治験に対する医師のモチベーションが高いと指摘するのは、前出の室井さんだ。