今クール始まった連続ドラマ『透明なゆりかご』(NHK)がじわりじわりと話題を集めている。清原果耶(16歳)演じる産婦人科医院の看護助手の視点を通じ、命のあり方を問う真摯な内容に視聴者の反響が広がっている。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがこのドラマの見どころと清原の演技について解説する。
* * *
コンスタントに2桁視聴率を記録する手堅い作品がそろった夏ドラマの中で、『透明なゆりかご』が異彩を放っています。放送前は「産婦人科の話か。『コウノドリ』(TBS系)みたいな感じかな」という声があったくらいで、ほとんど話題にすらあがっていませんでした。
しかし、7月20日の放送開始から回を重ねるごとに、「お産の描写がリアル」「メッセージ性のある内容に引き込まれる」「深く考えさせられる」「涙が止まりません」「演技に鳥肌が立った」などとほめたたえる声がジワジワと増えているのです。
放送前は「『コウノドリ』の二番煎じ」なんて厳しい声もあった『透明なゆりかご』は、なぜ支持を集めはじめているのでしょうか。
◆ドキュメンタリーのようなリアルとシビア
『透明なゆりかご』のテーマは、「産婦人科の日常であり、そこで生まれる光と影」。母子の人間ドラマを描くという点は、『コウノドリ』と同じですが、思わず目をそむけたくなるような“影”の濃さは『透明なゆりかご』のほうが上回っています。
ここまでの放送では、アウスと呼ばれる人工妊娠中絶、乳児虐待(疑惑)による死、網膜症で失明の危機がある中での出産、女子高生の単独出産、夫が意識不明の中での出産、そして10日放送の第4話では、妊婦が出産直後に急変、産婦人科と産科医の危機と、毎週シビアなエピソードが選ばれています。しかも、原作漫画をベースにしつつ、医療現場での取材を重ねることで、リアルなシーンを作り上げているのです。
注目すべきは、ドラマでありながら、視聴者を楽しませるエンタメに寄せすぎず、ドキュメンタリーのようなリアルさやシビアさを重んじていること。視聴率を獲りにくい重いテーマである上に批判的な声もあがりやすいなど、民放には難しいことに挑戦しているのは間違いなく、「このテーマは、ドラマだからと言って、過剰な脚色や演出をしてはいけない」というスタッフの覚悟を感じます。
◆「正直で嘘がない」清原果耶の演技